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2008年2月

2008年2月27日 (水)

古き良きもの

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25日の記事でご紹介した,ギヤの組み合わせで恒星時駆動を実現したスカイメモP
さっそく電気系を今風に改造しました。

ウォームホイールの歯数は120枚ですが,ウォーム軸に72枚のスパーギヤが
ついていましたので,手元にあった60枚のピニオンギヤをモーター側につけ
144枚系用の回路で駆動できるようにしました。

入手した時はグリースの劣化や異物の噛みこみ等で全く使えない状態だったので
オーバーホールしてみるとやはり期待どおりの造りです。

古い物ですが,焼き入れ後研磨されたウォームや砲金のホイールはよみがえり
改めて当時の造りに対する職人気質を感じます。

スカイメモは2代目のQを2台,(同時代のSTを1台)所有し
3代目のNSと4代目のRを修理した事がありますが
残念なことに,代を重ねるごとに造りが荒くなってきていると感じます。

電子回路の方は飛躍的に進化し,この当時の物はまさに過去の遺物のようですが
赤道儀本体の造りは明らかに丁寧で,材料も吟味されています。

この現象は老舗の望遠鏡メーカの製品にも言えるようですが
電子回路は飛躍的な進歩を遂げながら
なぜ肝心な機械部は逆行してしまったのでしょうね。
古い機種をオーバーホールするたびにそう思います。


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2008年2月25日 (月)

60÷19×60÷19=恒星時?

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ずっと気になっていたスカイメモPをネットオークションで手に入れました。
スカイメモシリーズは,PからQ,(ST),NS,Rと進化??していきましたがその
初代のものです。

僅か?30年前の機種ですが,恒星時で駆動するため今では考えられない
当時の努力に気づきましたのでちょっと一言。

当時は水晶発振を使ったステッピングモーターや,PLL制御のDCモーターは
一般的ではなかったので,安定した回転を得るのにシンクロナスモーターを使っていました。

シンクロナスモーターは名前の通り,電源周波数に同期して回転するので
その回転数は3000や3600RPMとなり,モーター直結のギヤで減速した場合も
1RPMなど,キリの良いものになります。

このままでは一般的な144枚や360枚のウォームホイールと組み合わせても
太陽時駆動になってしまうので,当時の設計者はギヤの歯数で太陽時より
約0.27%早い恒星時を作ったのです。

有名なのが351枚のウォームと45/44のギヤを組み合わせ,これを1/4RPMの
シンクロナスモーターで駆動する方法で,この場合太陽時より0.284%早く
ほぼ恒星時になります。(351×45/11を1RPMで駆動した機種もあります)

今回のスカイメモPはウォームホイールが120枚でこれに60/19×72/19の
中間ギヤ経由で1RPMのモーターで駆動しています。
わかりやいように片方の分子を60に置き換えて144枚換算で考えると,
60/19×60/19=3,600/361=9.9723になり,太陽時に対して0.277%早い見事な
恒星時になります。数字のマジックみたいですね。

プログラマブル分周器を使えばこんな苦労はしなくて良くなったのですが
その分周器も今では殆どが廃盤となりました。
たった30年ですが,電子技術の進歩の早さには驚かされます。

写真はそのスカイメモPのギヤレイアウトでモーター軸に19枚
中間ギヤに60/19枚,ウォームに72枚のギヤが付いています。

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2008年2月19日 (火)

赤道儀のウォームホイールその2

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前回はホイールの大きさについて触れ,直径は直接精度に関係すると記しましたが
今回はあまり表面には出てこない,ホイールの歯の厚みとウォームとの噛み合い
形状について感じた事を書いてみます。

赤道儀の自作に関する文献では,20cmクラスのウォームホイールの厚みは
10mm程度あれば強度的には十分との事で,実際にアトラクスとNJPもジャスト10mmです。
直径の大きなMS-5は厚さも20mmあり,上記とは別格ですが
私がここで言いたかったのは厚さよりその噛み合い具合?の事です。

写真を見ていただければご理解いただけると思いますが一番左のアトラクス用は
ホイールとの噛み合い面が浅くちょっと見は平ギヤの様です。
それと比べ一番右のMS-5用は噛み合いが深く,中央は大きくくぼんでます。

ウォームホイールとウォームがどれだけ接するかは一目瞭然で,噛み合いが
極端に浅いのはウォームの厚さ以上に強度に影響しないかと思うのですが。

写真は左から,アトラクス用,NJP用,MS-5用の各ウォームホイールを
ウォームとの噛みあい部が判り易いよう並べて撮影したものです。


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2008年2月18日 (月)

星野写真撮影用モータードライブ

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先般HPでご紹介しました「星野写真撮影用モータードライブ」の
途中経過の報告です。
写真は,タカハシのP-2用で,90S,H-40(スカイキャンサー)
マークX,GP-D,SPO-DX用を発売予定です。
(写真では裏面になるパネルは現在製作中でお見せできませんが)

一体型でモーターや駆動回路を全て内蔵しており
Canonのデジカメ用Li-ion電池で駆動できる仕様も開発予定です。
この場合,外部の配線は一切無くスイッチONで即恒星時追尾します。

星野写真撮影用ですから恒星時駆動のみで増減速の操作はできませんが
上記電池で10時間以上駆動できます。
もちろん全てギヤカバー付きで、海外遠征用などには最適かと思います。

3月末から順次発売し,仕様にもよりますが一番安価なGP-D用は
2万円台でのご提供を予定しております。ご期待下さい。


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2008年2月12日 (火)

赤道儀のウォームホイール その1

B08_02_12
たまたま異メーカーの中型赤道儀3機種を同時にオーバーホールする
機会があり,一緒に写真を撮る事ができましたので日頃思っている
ウォームホイールについて一言。

最初はその歯数と直径についてです。

ウォームホイールについては歯数の論議は良く行われているようで
○○は240枚だから高精度で○○は180枚になったので良くない等
の書き込みを見かけます。

赤道儀の追尾精度で問題となるピリオディックモーションは
ウォームギヤの偏芯が原因し,ウォームホイールとの当たりが強く
なったり弱くなる事で発生しますが,その度合いはホイール中心から
ウォームギヤとの噛み合い面までの距離に関連し,ウォームホイール
歯数とは関連しません。

同じ加工精度であればピリオディックモーションはウォームホイールの
直径に反比例すると言って良いと思います。

今回紹介するウォームホイールの写真は大きい順に以下のとおりです。
(何れも極軸用)

・ペンタックス MS-5用(歯数280枚 モジュール0.75 ピッチ円直径214mm)
・タカハシ NJP用(歯数240枚 モジュール0.6 ピッチ円直径144mm)
・ビクセン 初代アトラクス用 (歯数240枚 モジュール0.5 ピッチ円直径120mm)

3機種の歯数は2割程しか変わりありませんが直径は最大2倍程違います。

国産の赤道儀の場合,工作精度には大きな差は無いと思いますので
追尾精度は(強度もですが)ウォームホイールの大きさで決まる!と言って
も過言では無いでしょう。

追尾精度の話ついでに下記は各社のPモーションを公表したサイトです。
かなり信頼おける数値と思います。

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2008年2月 4日 (月)

ベアリング入りGP?GP-D?赤道儀

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以前オークションで落札したものですが,当時(と言っても2~3年前)アウトレット
で有名なビクセン開発工業が試作?した不思議な赤道儀です。

・外観上は色こそアトラクスカラーですがGP赤道儀そのもの
・分解すると,ウォームホイールはGP-D用の真鍮製で軸は鉄製
・ウォーム軸は色違いでGP-D用?
・極めつけは軸回転部にベアリングを使用している

ベアリングを使っているのは軸とハウジング間のみで軸とウォームホイール間には
使っていないので,その効果は精度には関係なく,予圧を強く掛けてもクランプフリー
時の回転が固くならないくらいかと思います。

この赤道儀はベアリングの効果はともかく,GPより少し重たいだけでGP-Dの精度を
持っているところが良いところです。

ピリオディックモーションの実測値も±10秒以下を軽くクリアーしますのでお気に入り
です。

写真は赤緯軸側を分解し,一部仮組した状態です。

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2008年2月 3日 (日)

EM-10用ハイブリッドモーター仕様AGS-1S

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AGS-1Sシリーズに新たにEM-10用をラインナップしました。
今回ご紹介するのはハイブリッドモーター仕様の高級バージョンです。

恒星時駆動周波数120PPSとステップ角上は十分滑らかな上
28mm角の小型ステッピングモーターを使用しておりますのでモーター自体の振動も
小さくなっております。

ハイブリッドモーターは高価ですがPM型に比べ高速特性やレスポンスに勝ります。
またギヤヘッドのバックラッシュがPM型のそれより小さいのもメリットです。

EM-10やEM-200はモーターとウォーム軸の伝達ギヤ比が1:1(EM-10は1:1.25)ですので
ギヤードモータのバックラッシュをモロに受けてしまいます。
(NJP用のPD-*X-Y用も同じモーターですが,こちらは伝達ギヤ比が1:5(DEC側)ですので
ギヤヘッドに起因するバックラッシュは理論上EM-200等の1/5になります)

そのためオリジナルはバックラッシュが大きく,特に赤緯は自動ガイド時の
キャリブレーション等に支障がでるとの話を耳にします。

今回のケースでは,対恒星時±80%で赤緯を修正した場合,時間で2秒強で
駆動し始めますのでオリジナルの半分以下になっております。

なお最高速度は電源電圧12Vで約450倍速,極軸望遠鏡の視野照明は
AGS-1S本体から供給されます。(AGS-1Sのパネル上から明るさの調整ができます)


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