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2008年6月

2008年6月29日 (日)

ウォーム軸受けのベアリングに思うこと


小型赤道儀でもウォーム軸受けにベアリングを使った機種がありますが
オーバーホール時に感じたことについて。

B08_06_29

一つはベアリングの与圧。
赤道儀のウォーム軸には大きなスラスト力がかかるので
両端からある程度の力で締め付けていますが(=与圧)
小型のボールベアリングに大きな与圧を与えると
ゴロゴロした回転となり滑らかな回転はできません。

写真上部はEM-200のウォーム軸周りですが
たまに与圧が極端に強いものがあります。
強すぎるとウォーム軸は引っかかったような回転となり
ピンピンと跳ねるような追尾になるようです。
原因は良く解りませんが鋳物のハウジングが痩せたりするのでしょうか?


もう一つは軸の偏芯。
ウォーム軸そのものの偏芯は1/100mm以下の精度で加工されている
と思うのでが,ベアリングを使用する場合,軸外径とベアリングの内輪の
公差が大きいとその分ウォームの偏芯が増えてしまい
(相殺される場合は減りますが)Pモーションが増加します。

オーバーホールでは精度に影響しますのでここは基本的には分解しませんが
何らかの理由で分解する場合
EM-200では簡単に抜けるので1~2/100mm程度の公差はあるようです。

同赤道儀は追尾精度にばらつきがあると言われるのはもしかすると
これが原因しているのかも知れません。

与圧はオーバーホル時に再調整できますが偏芯はどうしようもありません。
組んでは追尾テスト,また分解,追尾テストの繰り返しで最良となる
点を見つけるのは気が遠くなる作業ですからね。


因みに,下の写真は別の赤道儀のものですがこれは専用工具を
使わないと抜けません。
(専用工具での抜き取りは交換が前提ですので,取り外したベアリングは
使えなくなります。
組込時は新品のベアリングを専用のヒーターで暖めて差し込みます)


またこの偏芯を嫌ってミタカの一部や旧アトラクス(初期型)は
軸そのものがベアリングのボールと接する構造のものもあります。
またスラスト方向のみベアリングを使った機種もありますがこれは
ベアリングを使ってないものと同じでPモーションに影響するのは
軸の偏芯のみです。

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2008年6月28日 (土)

SSAGの感度は?

B08_06_28

一昨日は何とか晴れたので,先日ご紹介しましたStar Shoot Auto Guider
(SSAG)をテストしました。

結論から言えば,MeadeのDSI Proに比べると感度はかなり低いようです。

テストは同じ鏡筒にSSAGとDSI Proを交互に付け替えて行い,両者の比較
ですので定量性はありません。
鏡筒は,BORGの5cm+タカハシのバリエクステンダーでバリチューブの
数から見てfLは500mm弱になっていると思います。

この環境でDSI Proは2秒露出すればどこを向けてもガイド星が入って
きますが,SSAGは夏の銀河の中でも見つからない場合が多いようです。

またDSI Proは露出時間を増やせば見えている星が確実に増えますが
SSAGは2秒以上露出しても筋状のノイズが増えるだけであまり星の
数は増えません。
(PHD Guidingはダークが引けるのでノイズを消す事はできますが)

DSI ProとSSAGの写野の違いを考えるとDSIの感度を再認識させられ
ました。先日落ちたヤフオクの50,000円にもうなずけます??

同じ日に知り合いもテストしていますが,miniBORG60n,1秒露出で8等
くらいまで見えていたそうで,8cmのガイド鏡ならガイドマウント不要と
感じたそうです。

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2008年6月27日 (金)

海外遠征用アイテム(軽量三脚)

日食などの海外遠征時は機材の重量が限られますがその中で
大きなウエイトを占めるのが三脚です。
また折り畳み式の場合以外とかさばります。

080627

080627_1

そこで今年の日食にはギリギリになりますが写真のような三脚を
製作しました。

コンセプトは,
・軽量であること
・P-2やGP-Dクラスで日食やガイド撮影ができる強度を有すこと
・スーツケースに入ること
・木材を使わない事(木製品は豪州には持ち込めない場合があります)

まだ試作品で表面処理も行っていませんが,上記を満足できると
自負しております
特に肉厚3mmのパイプを使用していますので十分な強度です。


主な仕様は以下のとおりです。

・対応赤道儀:ビクセンGP/GP-D,タカハシP-2(専用アタッチメント使用)
・脚長:約70cm(3本とも固定のため水準調整は不可)
・質量:約2.5kg
・使用パイプ:直径35mm肉厚3mmアルミ(A6063)引き抜きパイプ
・脚固定方法:1本ずつ内側よりM10キャップスクリューで固定
・表面処理:白色アルマイト
・価格:三脚:36,000円,P-2用アタッチメント:8,000円(予定価格)
・発売時期:2008/7/20

高価ですが全て削り出し加工で脚の付け根は3次元加工です。

8月の日食に何とか間に合わせる事ができます。(7月20日発送予定)
ただ製作日程上,数量は限られますのでご予約をお願いします。

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2008年6月23日 (月)

自動導入モータードライブの換装

080623

一時期ショップオリジナルとして,他メーカーの赤道儀と自動導入
モータードライブを組み合わせる事が流行りましたが
モーターの持つトルクと赤道儀の要求するトルクがマッチしておらず
安定した駆動ができないものも多かったようです。

トルク不足を補うためにウォーム軸保持ベアリングの予圧を簡単に
調整できるよう対策は採られていますがやはり無理があったのでしょう。

EM-200の自動導入化改造は,これまでAGS-1Bでの対応としておりましがたが
基本性能が優れたEM-200赤道儀を,より安価に本来の性能を
発揮できるようにするためAGS-1Sでの対応としました。

安定した追尾とハイブリッドモーター特有のレスポンスを体感
していただければきっとご満足していただけると思います。
また同時に赤緯のバックラッシュは純正のモーターに比べ
半分以下になります。


なお,ショップオリジナル改造品は,ウォーム軸ベアリングの予圧や
ウォームホイールの当たりの再調整が必要なケースが多いので
同時にオーバーホルをお勧めいたします。


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2008年6月20日 (金)

ST-4の修理

B08_06_20

今日はSBIG製オートガイダーのST-4を修理しました。
電源関係の部品が故障していましたが交換で簡単に治りました。

ところでST-4と言えばオートガーダーの草分け的存在ですね。
今となっては,昨日ご紹介したSSAG等に比べれば使い勝手や大きさ
感度,消費電流等かなり見劣りしますが,当時は画期的な製品でした。
パソコン不要だった事も良かったと思います。

MeadeのPictor201XTもそうですが日本に上陸した当初は,「使えない」
との悪い評判もあったようです。
本当は当時オートガイドに慣れていなかったため,ガイド星の導入とピント
合わせができず「使いこなせなかった」のが実情のようです。

現在ではオートガイドは当たり前で機材も飛躍的に進歩していますが
当時の技術を駆使した内部構造を見るとST-4の開発者には敬意を表します。

SBIGもパソコン不要のオートガイダーを1,000ドル程度でリリース
すると囁かれていますが日本に上陸すると高くなるのでしょうね?

オートガイダー程度なら説明が英語でも問題ないでしょうから
直接輸入した方が良いかも知れません。
代行業者にお願いすれば日本にも転送してもらえるようです。

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2008年6月19日 (木)

話題のオートガイダー

080619
話題のOrion製オートガーダーStar Shoot Auto Guider(SSAG)を入手しました。

身内に英語の解る(残念ながら日本語は解らない)者がいるので
手配を頼んだところ,案の定Orionは日本には送れないとの事でした。

ところがある日突然「買えた」との事。
それも2台で本体499.9ドル+送料46ドル,注文してから7日目には届きました。
なぜ買えたのか聞いても英語の解らない私にはチンプンカンプン。


今回は知人分を含め2台注文したのですが,予想以上に安かったので
追加の注文は可能か?と聞くと「もう送ってくれない」と断られました。
一体どうやって日本に送ってもらったのでしょうね?

気になる感度ですが既に知人が使用しておりガイドマウントは
不要みたいですが近い内にMeadeのDSI Proとの比較テストを行う予定です。

で,そうなるとこれも欲しくなるのですが難しいみたいです。
NikonのD70と同じCCDを使っていて,冷却+16Bitで1300ドルですから
誰でも欲しくなりますよね。
突然「買えたよ」と言ってくれるのを微かに期待してはいますが。

http://www.telescope.com/control/product/~category_id=astro-imaging_camera/~pcategory=astro-imaging/~product_id=52084

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2008年6月11日 (水)

据付赤道儀用ハンドコントローラー

080611
据付用の大型赤道儀は電動(電磁)クランプ仕様のものが多いので
専用のコントローラーを準備しています。

両軸のクランプスイッチの他,赤経,赤緯の操作方向を入れ替える
スイッチも付けています。

また一般タイプにも付けていますが,大型機では安全上さらに重要な
「緊急停止スイッチ」はボタンの中央に配置しています。
いきなり電源を切るような乱暴な方法ではないので,ショックレスで停止します。


コントローラーとは直接関係ありませんが,大型赤道儀には当初から
エンコーダーが付いたものがあります。
このような機種用としてクローズループ制御タイプのAGS-100Cも
ラインナップしております。

クランプフリー時もパソコンと連動するため頻繁に導入を行う
公共施設などでは便利です。
また赤緯が部分微動で自動導入できない機種では導入支援機として
使えます。なお,プラネタリウムソフトはクローズループ制御専用の
SUPER STAR Ⅳを使います。

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