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2008年10月

2008年10月30日 (木)

ウォームホイールの歯数とバックラッシュ

B08_10_30
以前ウォームホイールの直径と追尾精度について触れましたが
今回は,ウォームホイールの歯数とバックラッシュの関係について一言。

赤緯軸は極軸と異なり常に一方向に回転する訳ではないので
逆転時のバックラッシュが問題になります。
眼視の時はレスポンスが悪くても我慢できますが撮影ではガイド不良の
要因にもなるようです。

このバックラッシュの原因の殆どは駆動用のモーターのギヤヘッドの
バックラッシュに起因する事は先日ご紹介しましたが
同じモーターの場合,赤緯のホイールの歯数が多ければ
バックラッシュは少なくなります。

赤緯軸を同じ角度回転させるために必要なモーターの回転角度を
考えれば当たり前の事ですね。

同じ理由で,モーターとウォーム間のギヤ比でも変わります。
以前のNJP用のPD-5XY等は1:5の減速でしたがEM-200は1:1です。
NJPのホイールが144枚,EM-200が180ですので計算上では
NJPのバックラッシュが1/4になります。
(実際にはこれにウォームホイールとスクリューの遊びや
伝達ギヤの遊びが加わりますが)

写真はNJPとMS-5のウォームホイールです。
MS-5のは大きさもさることながら歯数が約2倍ですのでモーターの
バックラッシュが全体に影響する量は計算上半分になります。
またMS-5はウォーム軸とモーターが直結ですので外部ギヤの
噛み合いによる遊びも無くなりさらに小さくなります。


実は,ここで言いたかったのはNJPとMS-5の比較ではなく
私のお気に入りの90Sの事です。
90Sは赤緯軸の扇形ギヤによる部分微動を敬遠する意見も
耳にしますが,私は扇形ギヤだからこそ実現出来たメリットの
方が大きいと思います。
不動点から鏡筒取付面までが短い事や常に観測者側に
向くバンド式のクランプレバーなどですが,
何と言ってもガイド撮影においては,扇形ギヤの能力は
歯数240枚のウォームホイールと同じです。
赤緯の修正には144枚のNJPより優れていると思うのです。

081030_1


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2008年10月27日 (月)

古い赤道儀の良いところ

081027_1
高橋製作所時代の古い赤道儀には,塗装色が黒色やグリーンのハンマートーン
仕上げのものがありますが,高級感があるうえ塗装が強いので今でも人気です。

実はこの時代の赤道儀は塗装の違いだけでなく,アルミ鋳物や削りだし加工品
に立派な陽極処理(アルマイト処理)が施されています。

アルマイト処理を行うと表面強度や耐腐食性が増す事や塗装の乗りが良く
なるのでアルミ製の加工品では一般的です。

ところが,塗装がソリッドのグリーングレー調に移行した時から
一部のパーツを除きこのアルマイト処理は省略されてしまいました。
直販オンリーから販売店で取り扱うようになった頃ですね。

写真はP-2赤道儀で,左半分が処理無し,右が黒色のアルマイト処理のものです。
パーツ数から見て処理費用はかなりのウエイトを占めていたようです。

また,同時期にグリースも変わったようでハンマートーン時代の赤道儀
には見られないグリースの滲みがグレーには目立ちます。
さらに定かではありませんがベアリングも変更されているような感じです。


ところでP-2赤道儀はP-2SかP-2Zになった頃,以前より追尾精度が良くなったと
アナウンスされていましたが,私の2台のP-2は古くともとても高精度です。

081027_2
写真はアルビレオで離隔は34秒ほどですから,その高精度ぶりはご理解
いただけると思います。
(露出時間は20分で大きな曲がりはPモーションだけでなく撮影時の撓み
を含んでいます)

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2008年10月11日 (土)

EOS40D修理すみました。・・・が。

B08_10_11
先日ブログでご紹介したEOS40Dの故障は、修理完了し戻ってきました。
突然電源が入らなくなった原因はメイン基板不良との事で
修理内容は基板一式の交換でした。

知り合いの40Dも申し合わせたかのように同じ時期に同じ症状だったので
ネットで調べてみると結構不具合が多いようです。
特に40Dでは「エラー99」が多いようでかなりの書き込みがあります。
エラー99が出てからやがて電源が入らなくなる事が多いようで
私達のようにいきなり電源が入らなくなるケースはあまり見かけませんでした。

今回の故障は日食旅行から帰った後だったので良かったのですが
旅先で起きたら・・・・考えるだけでゾッとします。

デジタル1眼レフカメラは壊れるもの思って
大切な行事では予備を持っておく必要があるとの書き込みも多いようです。


ところで,メイン基板の不良となると重大な故障ですが
保証の効かない天体用改造機はどう対処するのでしょう?

知り合いの40Dはお隣の国での冷却改造ですので老婆心ながら心配ですし
入手したばかりの私のKissX2冷却は?と。

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2008年10月 9日 (木)

バックラッシュの無い理想の減速機

081009

動力用は別として,位置決め用モーターと組み合わせる減速機にとって
バックラッシュは厄介な存在です。
一般的な平ギヤを使った減速機では,ハイブリッドモーターとセットの
高級なものでも1度程度,小型赤道儀に使われるPM型では3度程存在します。
(メーカーカタログ値で実際はこれより小さくなっています)

仮にバックラッシュが1度のギヤヘッド付きハイブリッドモーターで
赤緯軸を対恒星時の100%相当で正逆回転した場合
外部の伝達ギヤやウォームの遊びを「0」と仮定しても,実際に赤緯軸が
動き出すまでの時間は,600秒×1/360度=1,7秒(ウォーム歯数144枚時)
つまりモーターだけで2秒弱の不感帯(=バックラッシュ)が存在します。

安価なPM型は上記より大きく,これに伝達ギヤやウォームホイールの
遊びを加算すると,修正をかけてから5秒以上は反応しない状態が続きます。

本来,撮影時の赤緯の駆動は極軸ズレの補正動作であり
一方方向にしか行われないのでバックラッシュがあっても大した問題では
ありませんが,外乱が入るとハンチングを起こしたり
オートガイダーがキャリブレションできないなどの不具合が起きる場合もあるようです。

そこでバックラッシュを排除するには減速機を使わなければ良いのですが
モーター単体では,トルクを確保するために大きなモーターとなる事や
モーターに大電流を流す必要があるなど移動用の小型赤道儀では
単純ではありません。


今回紹介するハーモニックドライブは位置決め用モーターにとって理想の
減速機です。
・バックラッシュはゼロ
・常時ギヤ全体の1/3程度が噛み合うためギヤのピッチ誤差が平均化され高精度
・高トルク
・低騒音
など優れた特性です。

ハーモニックドライブの原理と動作説明(動画あり)に興味のある方は
こちらのサイトを参照ください。

弾性変形する柔らかい歯車がミソです。
柔らかな脳味噌でないとこんな発明はできませんね。

良いことばかりのハーモニックドライブですが小型赤道儀が買えるほど高価です。

今回,幸運にもまとまった数の中古を確保できました。機器取り外し品ですが
機械的な劣化は殆ど無いものです。

5相マイクロステップのAGS-10とハーモニックドライブの組合せは
最強の赤道儀駆動装置と言っても過言ではないでしょう。

中古のモーターを利用する事で,一式の価格はほぼドライバーのみの価格です。
数量限定でセット販売しております。

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2008年10月 2日 (木)

デジタルでも使える中判用APOレンズ

B08_10_02
このところの中判カメラレンズの中古市場は,デジタル化のあおりを受け
激安状態のようです。

一例を上げると,新品同様のPENTAX67用200mmF4は15,000~18,000円程度
今回紹介するマミヤ645用のAPO 200mmF2.8は,ほぼ未使用状態のもので
40,000円強でした。相場は新品価格の1/4~1/5程度のようです。

設計の古い銀塩用レンズはデジタルでは使えないものが多いようですが,
PENTAX645用の300mmF4 EDや67用の300mmF4EDは冷却CCDでも使える
ようです。
所有するZeissのTele-ApoTessar400mmF4も輝星の滲みもなくシャープで
中判レンズでも設計の新しいAPOレンズはデジタルカメラでも十分
使えるみたいです。
 
 

そこで,高性能で有名なマミヤのAPOレンズのうち,新品同様が安価で数多く
出回っている200mmF2.8を入手してみました。
ただマミヤ645-EOSマウント変換アダプターはレンズと変わらないほど
高価だったので接写リングを改造して自作しました。

その性能ですが,昨夜久しぶりに晴れたので早速試写したところ期待どおりの
ようです。
自宅は光害がひどいため参考程度ですが週明けには清和で再テストします。
 
 
ところで昨夜,突然40Dの電源が入らなくなりました。
丁度冷却のX2が届いていたのでテストはできましたがCANONのデジ一も
突然死するのですね?

今朝,知り合いから「昨夜40Dを使っていたら突然電源が入らなくなって困ったよ」
との電話があり,えっ,これって偶然?........どうでしょうね。

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