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2009年5月

2009年5月29日 (金)

P-2も抜き差し式バランスシャフト

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たびたびですが,P-2赤道儀の改造ネタをご紹介します。
今回は既に商品化しているGP赤道儀用海外遠征アイテムのP-2版。

過去にも重たいウエイトを持って行かなくてよいように
バランスウエイト側にカメラを付ける改造を行ってきましたがどれもイマイチでした。

直棒ではバランスがとれないため,抜き差しを試みましたが
一般的な押しネジでの締め付けでは固定が緩くガタが発生しました。
そこで,今回GP用の商品化に当たっては過去の経験を生かして
スリ割り式クランプを採用したところ,予想以上に好結果を得ましたので
P-2用も同様のアイテムを作りました。
P-2の場合,抜き差しできる調整代は5cm程しかありませんが
延長シャフトを併用すれば充分実用になります。

鏡筒側には300m程度の望遠レンズ,バランス側には自由雲台を付けて
広角レンズで同時撮影もできそうです。
でも二兎追う者何とやらで同時撮影は成功率が落ちますね。
バランス側のカメラはあくまでもバランスウエイトと割り切る方がいいでしょう。
カメラの真ん中にシャフトを通すわけには行かないので
抜き差し式シャフトは充分に意味のあるアイテムだと思います。

今回も強度・精度・信頼性(特に極軸望遠鏡)の三拍子揃ったP-2赤道儀を
正当?に改造したアイテムと自負しています。
P-2赤道儀がさらに理想のポータブル赤道儀に近づいたかな?と思っています。


今回の改造パーツは商品化の予定はありませんが実費での頒布は予定しています。
ご希望の方はHP上からお問い合わせください。
同時に写真の赤緯微動部をロックするアイテムもまとめて作ったので
少し手持ちがあります。
日食や星野撮影では必ずしも必要でない微動をロックするものです。
長い微動軸とスプリングハウジングがなくなるので携行性がよくなります。


頒布品は,赤道儀にネジ込むリングとスリ割りクランプの固定は行っていません。
ネジが締まるところは赤道儀個体で異なるのでクランプの位置関係上
予め加工ができませんのでご了承ください。
頒布価格は,赤緯の微動ロックも併せて写真の一式で17,000円程度です。

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2009年5月21日 (木)

上海日蝕ツアーのご案内

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日食観測の際,私がいつもお世話になっている
佐賀・長崎の天文グループが主催する「上海日蝕ツアー」に若干余裕ができたので
参加者の追加募集を行っています。

こちらは1995年のインド日食以来,実に過去8回の実績を持ち
今回も充分な事前の現地踏査も行なっており,安心してご参加いただけます。
総勢300名以上のツアーとなります。
観測地は上海市の東南東約80kmの沖合に浮かぶジョウシ列島。
海産物が美味しいリゾートの島です。

場所の選定にあたっては,夏場の上海市付近の天候はあまり良くないうえ
晴れていても影ができないほどのドンヨリした空が多いとの情報から
数回にわたる現地踏査,上海気象台の記録の分析
現地在住の人からの聞き取りなどを行って決定しました。

この時期は南東の季節風が吹くため
ジョウシ島は上海市の風上になるので,空の条件はかなり良いものと思われます。
ジョウシ島付近の地図


募集要項は以下のとおりです。

・福岡発着便:約20名  7月20日~23日(3泊4日) 費用126,000円
・関空発着便:約10名  7月20日~23日(3泊4日) 費用146,000円

上記費用には燃料サーチャージは含んでいませんが
現時点では最大でも1,200円程度です。なお空港利用税は含んでいます。
また台風等でジョウシ列島に渡れない場合を想定して
その日の宿泊は上海市内でも押さえています。

詳しくはHPの「お問い合わせ」からメールをいただければ折り返しご連絡します。
受付は5月31日までですが,定員になった場合はその時点で終了します。


写真は2001年の南オーストラリア日食です。

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2009年5月15日 (金)

蘇るか?シュミットカメラ

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シュミットカメラの高い性能はみなさんご存知のことですが
相性の良いフィルムがなくなってしまったことや
焦点面が球面になるため,そのままでは平面のデジタルデバイスでは
撮影できないことで一線を退いた感があります。

私の観測所には16cmと22cmの2本のシュミットカメラが眠っています。
天体写真を始めた頃からの憧れで
いつかはシュミットで写真を撮りたいと思って入手したのですが
冷凍庫内の大量のTP4415とともに出番を待っているのです。

しかし,時代は冷却CCDやデジカメ全盛で
星雲や星団のアップでは銀塩に勝ち目はありません。

そこで何とかシュミットカメラでデジタルデバイスが使えないだろうかと
ネットで調べたらありました。
田中光化学工業の田中様のHPにシュミットの平坦化が紹介されていました。
偶然にも昨年,西はりまでの星空研究会の席でご本人にお会いできたこともあり
改造を思い切りました。

写真は鏡筒から抜き出した主鏡と本来フィルムのあった位置に取り付けた
冷却CCDカメラです。これが筒先に補正板が収まった鏡筒の中に入ります。

これから田中光化学工業様のご協力を受けて
補正レンズのマッチングを探って行く予定です。

手始めに16cmでテストして結果が良ければ22cmも同様の改造を行うつもりです。
何れもF2.5ですのでワンショットカラーカメラと組み合わせれば
彗星などの撮影で実力を発揮できるかも知れません。
シュミットの目を見張る性能を蘇らせれば嬉しいのですが。
うまく行けば取り残されたTP4415は他で使ってやることにします。

なお,この記事の内容は田中光化学工業様のご承諾をいただいております。

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2009年5月13日 (水)

減光フィルターとピントの関係

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日食撮影時の減光用ガラスフィルターとピントの関連には
以前から疑問を持っていたのですが今回テストしてみましたのでちょっと一言。

第二接触から第三接触までを撮影する場合,多くの方は皆既直前の細くなった太陽
(月縁)でピントを合わせると思いますが,その時点ではまだフィルターがついています。

個人的には,フィルターは対物レンズの前にあるので
たとえ厚みのあるガラスフィルターでも原理的にはピントへの影響はないと
思っていましたが日食経験豊かな方々は「フィルターを外すとピントがずれる」
と言われます。

そこで実際に対物レンズの前にガラスフィルターを付けた時と外した時で
本当にピントの移動があるのかテストしてみました。

結果はフィルターを付けるとピント位置が45/100mmほども後に移動しました。
理由は解りませんが,焦点深度からみて450ミクロンもずれると
写真撮影でも影響は出そうです。
大まかに言えばF8の場合,ピント位置450ミクロンのズレは
点像を50ミクロン肥大させるので経験者が言われることは間違いないようです。
(FC60+Or5mm(100倍)+BORG直進ヘリコイドSをつけ厚さ2mmのガラスフィルターを
付け外しし遠くの高圧鉄塔の碍子に反射する太陽光(ほぼ点像)で確認)

私はトルコ日食時はショップオリジナルの薄いD4フィルターを使ったため
ピントのズレは感じませんでしたが,去年のウイグル自治区日食では
そのフィルターが行方不明だったので
急遽ガラスフィルターを使って失敗してしまいました。
今回テストしたのはそのためです。

また,2001年の南オーストラリア日食時はカメラレンズでの撮影だったので
一旦カメラを地上に向け,遠景でピントを合わせたので問題はありませんでした。

今年の日食では厚みが10ミクロン程度のアルミ蒸着フィルターを使うか
ガラスフィルターの場合は一旦フィルターを外して
地上の遠景でピントを合わせるかになりそうです。

今回の結果を踏まえ,この件をネットで検索したところ
やはり「フィルターを外すとピントはずれるのでフィルターを外した後に
ピントを合わなおす必要がある」との記事があります。
だけど,一番撮りたいシーンは第二接触ですからそれは無理ですよね。

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2009年5月12日 (火)

鏡筒バンドとアリガタ・アリミゾ

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FSQ-106ED等の半割式鏡筒バンドは完全に真円加工しているため
鏡筒にピッタリと貼りつくような感じで鏡筒を完全にホールドします。
分厚いフェルトに頼っていないので時間の経過とともにずれるようなことはありません。

ただ,構造上4本のボルトで上下のバンドを縫い合わせるため
都度鏡筒を付け外しするのはなかなか面倒です。

そういうわけで
半割式の鏡筒バンドはアリガタ・アリミゾシステムとの併用を前提としていますが
今回,各種鏡筒バンドのラインナップに合わせて
アリガタの仕様(アクセサリー取付穴位置)を見直しています。

・68,80 ,95mm用鏡筒バンドはDS65用の各種アリガタに
・125mm用鏡筒バンドはDS80の各種アリガタに対応します。
(FSQ-106EDの鏡筒回転ハンドルとの干渉は考慮しています)

何れのタイプでも目的に合った長さのアリガタを選んだ上で
最良のバランスになる位置に鏡筒バンドを取付できます。
また,アリガタの穴位置に合わせた各種トッププレートも同時に発売します。

95mmまでのDS-65用は5月20日から,125mmのDS-80用は6月10日から
販売開始予定です。

写真は大きい方が,DS80+DP80-250にTB-125を
小さい方が,DS65+DP65-150にTB-95を取り付けた状態です。
(DP80-250は穴加工位置の変更前のものです)

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2009年5月 9日 (土)

材料を無駄にしない設計

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軽量かつ高精度な鏡筒バンドは,アルミの板から切りだして作っていますが
その形状から材料のほとんどが切り屑になってしまいます。
実に材料の90%近くを無駄にしているのです。

今までに商品化した,68,80,95,125mmバンドは加工代の観点から
異なったサイズを1枚のアルミ板から切り出すことはできませんでしたが
計画中のイプシロン180ED用はあまりにも巨大なため
切り抜いた部分でも余裕でFSQ-106ED用の125mmバンドが作れます。

また材料手配~加工の段取りも効率化され
トータルではかなりのコストダウンがはかれるので
FSQ-106ED用とε180ED用を同時製作することにしました。

完全に真円加工されたバンドで2カ所を固定するので
バンド幅は強度的には小口径で採用している12mmでも問題ないのですが
鏡筒径が大きい場合はバンドの幅が薄いと鏡筒に対して
バンドが倒れるおそれがあるので20mmを予定しています。

同じ板から切り出すのでFSQ-106ED用のバンド幅も前ロットと同じ20mmとなり
HPのNEWSで紹介した内容と異なりますが
結果的に前ロットから材料費相当の約20%のコストダウンがはかれます。
メインプレート付きで30,000円弱を予定しています。

写真は68,80,95,125mmの各バンドと計画中のε180ED用の図面に
FSQ-106ED用を書き込んだものです。

なおFSQ-106ED用の場合,バンド幅20mmと12mmでの重量差は200gです。

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