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2009年10月

2009年10月31日 (土)

アトラクス赤道儀の駆動系ギヤ比変更

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お客様からのご依頼で旧アトラクス赤道儀のASCOM対応改造を行いました。
AGSシリーズはASCOMに対応していませんので*
今回はドイツ製のDynoStarX3を使っての改造となりました。
(*ユーザー様から,AGS(E-ZEUS)をASCOMに対応させる専用モジュールを
開発されたとの情報をいただいています)


旧アトラクス赤道儀はマイクロステップ駆動が一般化する前の製品なので
恒星時駆動周波数を高くするためにギヤ比の大きな中間減速(40:1のウォーム)
を採用しています。
(オリジナルの恒星時駆動周波数:240×40×200×2/86164=44.57PPS)

快適な自動導入を行うためにはある程度の駆動速度が必要になります。


AGSシリーズはコイル抵抗の低い(0.63Ω)高速モーターをユニポーラで駆動
するため,減速比が大きくても200倍速以上で自動導入ができますが
今回はドイツ製のDynoStarX3なのでこの大きな減速比が足かせになってしまいます。

というのは,ドイツ製のDynoStarX3やMTS-3SDIは
トルクの大きい(コイル抵抗が大きい=巻き数が多い)ステッピングモーターを
64分割のマイクロステップで駆動する方式でギヤヘッドに頼らない設計です。
さらにバイポーラ駆動ですので強力なトルクを発しますが
高速特性は全く良くありませんので,構造上中間ギヤを使わざるを得ない
旧アトラクス赤道儀はオリジナルのままでは50倍速に満たない導入速度で
実用になりません。

そこで中間ギヤ比を変更を検討しましたが
現状の軸廻りの位置は変えられないので簡単ではありません。

色々検討した結果,オリジナルの
・ウォーム歯数40,モジュール0.5から
・ウォーム歯数20,モジュール1.0(2条ネジ)
をを採用する事で軸廻りの位置はそのままでギヤ比を
40→10へ変えることに成功しました。
モジュールの変更だけでは40→20にしかならないのですが
2条ネジの採用でさらに半分になりました。

これでDynoStarX3でも200倍速以上で自動導入可能となります。

DynoStarX3での恒星時駆動周波数は240×10×200×64/86164=356.5PPS
となります。
これはオリジナルのままの中間ギヤをAGSシリーズで駆動する場合と同じです。
(AGSでの恒星時駆動周波数:240×40×200×16/86164=356.5PPS)

今回はASCOM対応が条件でしたので大がかりな改造となりましたが
必ずしもASCOMに対応する必要がなければ,安価なうえ
オートガイドやパソコンとの接続が便利なAGSシリーズをお薦めします。
写真奥右が改造前(劣化グリースの洗浄前),左が改造後です。

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2009年10月23日 (金)

Webカメラでのオートガイド

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先日取り上げましたオートガイドのうち
Webカメラを使ったオートガイドのをテストを行ってみました。

写真のように,FC-60に直接取り付けて木星を撮ったのが下の画像です。
5秒の露出で6等ほどのガリレオ衛星は鮮明に写っているので
6cmのガイド鏡では6~7等星までならガイドできそうです。


Webカメラの流用ですので天体用に作られた冷却CCDの感度には
遠く及びませんが,ガイドマウントを使えば十分に実用になります。

ガイド状態をAtik 16ICと比較しましたが何の遜色もありませんので
ガイドの精度は同じと思って良いでしょう。

Webカメラとフリーソフトのお陰で以前は高価だったオートガイドが
非常に安価に実現できるようになりました。

パソコンとWebカメラの組み合わせなら自作品でもメーカー製でも
同じような性能です。簡単ですので自作されてはいかがでしょうか。

写真のWebカメラを入れたアルミダイキャストのケースは
電子部品店で1000円程で売られているものです。

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2009年10月20日 (火)

オートガイダーの選び方について

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先日もご紹介しましたが,最近は色々なオートガイダーが発売されたり
安価なWebカメラを改造して自作もできる事から選択肢が広がっています。

赤道儀の自動導入改造の際,お客様からのご質問も多いので
私なりに選び方のポイントについてまとめてみました。
私が機種ごとに実際に使用した感想をとりまとめたもので,あくまでも私論です。

・パソコン不要のスタンドアローンタイプ 
 個人的に海外遠征時も含め常用しているタイプです。
 パソコンが不要ですから,デジタルカメラや銀塩カメラでの撮影に向いています。
 条件としては消費電流が小さい事で,ガイドマウントが必須ですので
 感度は特に高い必要はないと思います。
 (パソコンがないのでモニター上でガイド星を探すことはできません。
 いずれにせよガイドマウントでガイド星を探すことになるかと思います)

 先日ご紹介したイタリア製のスマートガイダーは使いやすく
 消費電流も小さいのでお勧めです。


・パソコンを使用するオートガイダー(高感度カメラの場合)
 パソコンのモニターに写ったガイド星を選択してオートガイドしますが
 カメラの感度が高いので小口径でも暗い星を検出します。
 何処に向けてもガイド星が見つかるので撮影効率は格段に向上します。
 
 ガイド鏡を撮影鏡筒に固定できるので
 ガイドマウントのガタ等の不安要素が少なくなりますし
 小口径でもオフアキシスガイドができる点も大きなメリットです。
 MEADEのDSI Proは安価で感度も高かったのですが廃盤となってしまいました。
 
 現行商品では選択肢が少ないのですが
 写真のAtik製16-ICは比較的お求め安い価格でお勧めです。
 冷却していますが消費電流は意外と小さく,350mA(12V)程度です。
ー 消費電流は,550mAの間違いでした。09.12.17追記ー
 移動観測においては消費電流が小さいことは非常に重要ですね。
 以下のSSAG程ではありませんが軽量な点も見逃せないポイントです。
 SBIG互換の制御出力ポート(RJ11)を備えているのでカメラと赤道儀を直接繋げます。
 オートガイドソフトはフリーソフトのPHD Guidingが使いやすいようです。
 

・パソコンを使用するオートガイダー(低感度カメラの場合)
 パソコンを使うところは上記と同じですが
 カメラの感度が低いので小口径のガイド鏡ではガイドマウントが必要になります。
 随分前にご紹介しました米オライオンのSSAGは安価で超小型ですが
 比較的感度は高く,口径が8cm以上あればガイドマウント不要との報告もあります。
 また,Atik-16IC同様制御出力ポートを備えています。
 
 
・パソコンを使用するオートガイダー(Webカメラを使用する場合)
 基本的には上記の低感度カメラと同じですがなんと言っても安価です。
 フリーソフトのPHD Guidnigを使えば以下のアダプターを含めても
 10,000円程度でオートガイドができます。
 制御出力がないのでそのままでは使えませんがUSBポートから信号を取り出す
 アダプターをネット上で良心的な価格で頒布されています。
 またパソコンにパラレルポートがあればさらに安価に出力を取り出せます。
 写真右手前がWebカメラを適当なケースに入れた半自作カメラです。
 
 ソフトが日本語環境でないだけでメーカー製の1/10程度の出費で
 ほぼ同じ機能を発しますので腕に覚えのある方はチャレンジされては如何ですか?

以上を私なりにまとめると
・デジカメ等必ずしもパソコンを使わない場合はイタリア製のスマートガイダー。
・パソコンを使うならガイドマウントが不要な高感度オートガイダー(CCDカメラ)。
・徹底的に安く上げるにはWebカメラで自作。

最後に,どこを向けてもガイド星が見つかる高感度カメラは圧倒的に便利です。
特に冷却CCDで遠隔撮影する場合は,自動導入で構図を微妙に変えた後も
即座にオートガイドできますのでこの便利さに慣れると元には戻れないでしょう。

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2009年10月19日 (月)

ピラーや三脚の敷物に

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自宅屋上に,色々な赤道儀に対応する新しいピラーを設置しました。
床は防水シートなのでピラーの水平調整用ボルトの下敷きが必要です。
アルミプレートで作ろうかと思っていましたが
工業製品のカタログで偶然に良いものを見つけました。

商品名はシーティングプレート。
各種サイズ,形状(円形か四角形),材質(鋳物かステンレス)が揃っています。

今回紹介するのは直径100φの円形と,100mm角の四角いタイプで
厚みは20mm,材質はいずれも鋳物です。

上面にはボルトや三脚の石突きのすわりが良いような彫り込み加工もあります。
円形タイプは底面の中央がくぼんでいるので
柔らかい土の上ではこちらが安定するみたいですが
今回は防水シート面への設置ですから,底面がフラットな角タイプを使いました。

ご紹介したものは1個500~650円です。 なにより安価なところが良いですね。
鋳物(鋳鉄)なので錆びはしますが,マンホールの蓋と同じようなもので
鉄板と違ってひどく錆びないので充分でしょう。
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2009年10月 1日 (木)

EM-10/200用 AGS-1X 試作完了!

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EM-10(11),EM-200用の廉価版自動導入モータードライブを開発中です。
開発コンセプトは,安価,赤道儀本体内蔵,エコ,そして必要充分な機能です。

価格はモーターも含めた一式で59,000円!(EM-10用,お客様で交換の場合)
また69,000円で自動導入ソフト(Sper StarⅣ)とのセット販売も行います。
価格にはパソコン接続用のUSBケーブルやオートガイドケーブルも含みます。
(オートガイドケーブルはSBIG互換機種用,他は別途ご購入となります)

交換に自信がない方は,8,000円(EM-10の場合,送料は別途)で行います。
また同時にオーバーホールをご希望の場合は
交換も含め18,000円(EM-10の場合)です。


回路部のユニットは赤道儀ハウジングに全て内蔵し
パネル面の出っ張りも最小に抑えるのでスマートです。
パネル面のレイアウトはサイズの制約で窮屈ですが
USB端子やオートガイダー接続端子を配置しています。
また,AGSシリーズ共通のオートガイド状況を確認するLEDや
キャリブレーション信号でガイド速度に切り替わる機能も有します。


ハンドコントローラーはお手持ちの純正品を使用します。
切り替えスイッチの構造上,速度設定は一部制約を受けますが
実使用には支障がないようにしています。
できるだけ既存の機材を活用する事で,安価かつエコを目指しました。


導入速度は,特注モーターの採用で250倍速です。(12V駆動)
パソコンを使った自動導入の場合,目標の近くの恒星を基準星とするので
必要充分な速度でしょう。
また恒星時駆動周波数は80PPS。
滑らかなマイクロステップですので惑星の高倍率観測でも問題ありません。

EM-10(11)用は11月初旬発売開始,EM-200用は2010年1月発売予定です。
EM-200の価格は後日正式に発表しますが,70,000円弱を予定しています。
EM-200の場合,現状のAGS-1Sのハイブリッド仕様との比較では
最高速度で1/2,トルクも少し落ちますが,通常の使用では必要充分です。


手動速度設定に関して
純正コントローラーの速度設定スイッチは,状態を保持するタイプですが
自動導入時やオートガイド/キャリブレーション時はそのポジションを無視
して見合った速度とする必要があります。
上記機能を満足するよう自動導入・オートガイド優先としていますが
そのため手動での速度設定は純正とは異なります。
詳しくは後日アップする商品のページでご説明いたします。

またパワーユーザー様の手でAGS(E-ZEUS)をASCOMに対応するソフトを
開発されておりますが,AGS-1Xは上記の関連で一部E-ZEUSの標準仕様
とは異なるインターフェースを採用しています。
ASCOMに対応するかは不明です。

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