アトラクス赤道儀の駆動系ギヤ比変更
お客様からのご依頼で旧アトラクス赤道儀のASCOM対応改造を行いました。
AGSシリーズはASCOMに対応していませんので*
今回はドイツ製のDynoStarX3を使っての改造となりました。
(*ユーザー様から,AGS(E-ZEUS)をASCOMに対応させる専用モジュールを
開発されたとの情報をいただいています)
旧アトラクス赤道儀はマイクロステップ駆動が一般化する前の製品なので
恒星時駆動周波数を高くするためにギヤ比の大きな中間減速(40:1のウォーム)
を採用しています。
(オリジナルの恒星時駆動周波数:240×40×200×2/86164=44.57PPS)
快適な自動導入を行うためにはある程度の駆動速度が必要になります。
AGSシリーズはコイル抵抗の低い(0.63Ω)高速モーターをユニポーラで駆動
するため,減速比が大きくても200倍速以上で自動導入ができますが
今回はドイツ製のDynoStarX3なのでこの大きな減速比が足かせになってしまいます。
というのは,ドイツ製のDynoStarX3やMTS-3SDIは
トルクの大きい(コイル抵抗が大きい=巻き数が多い)ステッピングモーターを
64分割のマイクロステップで駆動する方式でギヤヘッドに頼らない設計です。
さらにバイポーラ駆動ですので強力なトルクを発しますが
高速特性は全く良くありませんので,構造上中間ギヤを使わざるを得ない
旧アトラクス赤道儀はオリジナルのままでは50倍速に満たない導入速度で
実用になりません。
そこで中間ギヤ比を変更を検討しましたが
現状の軸廻りの位置は変えられないので簡単ではありません。
色々検討した結果,オリジナルの
・ウォーム歯数40,モジュール0.5から
・ウォーム歯数20,モジュール1.0(2条ネジ)
をを採用する事で軸廻りの位置はそのままでギヤ比を
40→10へ変えることに成功しました。
モジュールの変更だけでは40→20にしかならないのですが
2条ネジの採用でさらに半分になりました。
これでDynoStarX3でも200倍速以上で自動導入可能となります。
DynoStarX3での恒星時駆動周波数は240×10×200×64/86164=356.5PPS
となります。
これはオリジナルのままの中間ギヤをAGSシリーズで駆動する場合と同じです。
(AGSでの恒星時駆動周波数:240×40×200×16/86164=356.5PPS)
今回はASCOM対応が条件でしたので大がかりな改造となりましたが
必ずしもASCOMに対応する必要がなければ,安価なうえ
オートガイドやパソコンとの接続が便利なAGSシリーズをお薦めします。
写真奥右が改造前(劣化グリースの洗浄前),左が改造後です。
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