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2010年4月

2010年4月24日 (土)

公共天文台の自動導入改造

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昨年末から何件かの大型赤道儀の自動導入改造を行いました。
ほとんどは公共天文台です。
赤道儀が大きい分,モーターも大型になりますが
自動導入の改造自体は小型赤道儀と変わりありません。

ただ大型赤道儀の場合は,緊急停止スイッチはもちろんのこと
電動クランプや電動フォーカスさらにはドームの回転制御も取り込むことがあるので
ハンドコントローラーの仕様が変わります。特注仕様となる場合もあります。


また公共の場合,特殊な知識を必要としないシステムを望まれることもあります。
今回,自動原点位置決め機能付きのAGS-100HPと
Seeds Box様のご協力を得て同機能対応のSuperStarⅣを開発しました。

赤道儀は「ホームポジションボタン」を押すと自動で原点位置に移動します。
原点位置決め機能付きのSuperStarⅣでは画面に原点位置
(画面中央の「ホームポジション」と表示された緑色の三角点,地平座標)
が表示されるので,実際の星でアライメントをとらずに簡単にリンクできます。
公共天文台では昼間の金星なども導入するため便利です。

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以下はSuperStarⅣの画面(クリックで大きくなります)と
赤道儀に設置した光学センサーの写真です。
赤道儀のセンサーは概略設定すれば,SuperStarⅣ側で「ホームポジション」
を詳細に設定できるので簡単に正確なアライメントができます。

なお赤道儀に原点検出スイッチを付けなくても
簡易的な方法として目盛環等の指標を合わせることで
上記機能を利用することもできます。

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2010年4月18日 (日)

自宅にドームを据えました

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今週は自宅屋上にドームを据え付けました。
ドームは年末に届いていたのに,多忙で先延ばしにしていましたが
最近NHKで見たハッブル宇宙望遠鏡に刺激され?重い腰を上げました。

導入したドームは国際光器様扱いのPOD
完全にキット化されているので大人2人で組み立てられます。
各パーツは屋上までロープで吊り上げました。
材質は化学的に安定しているポリエチレン製なので耐久性は高いようです。

このドームは重機なしで据え付けできるうえ安価でもありますが
選んだ一番の理由は,写真のように1/4球の開閉ができるためです。
一般的なスリット式のドームの場合,長時間露出や鏡筒の東西入れ替え時など
ドームを回転させる必要がありますが
2m程度の小型ドームでは望遠鏡とスリットの距離が近いので
常にスリットでのケラレを意識しなくてはならないようです。

個人的にはスライディングルーフが好きなので,スライディングルーフと
ドームの中間的な使い方ができると考えました。

ただ1/4球状態で開閉なので天頂付近を見るには赤道儀をオフセットして
据え付けなくてはなりません。実際に設置するまで心配でしたが
写真の15cm屈折程度ならオフセットしても筒先がドームに干渉することはないようです。

今日も日中に色々機材をセッティングしましたが
昼間のドーム内は明るい室内と言った感じで作業にはもってこいでした。
私の場合,雨天時のオーバーホールの洗浄作業に使う予定があるので
これが一番のメリットかも知れません。ポリエチレンは耐薬品性も高いので!

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2010年4月16日 (金)

フィルターホイール対応フォーカサーWith OAG

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フォーカサーについてはたびたび紹介していますが
現在,M92タイプの大型と平行して
Atik製の1.25インチ用フィルターホイールとの接続を前提にした
小型のフォーカサーも開発しています。いずれも実機テスト段階です。

フィルターホイールは構造上光軸がオフセットしていますが
このフォーカサーも同じ位置に光軸を配置し外径も同じ120φにしました。
M92タイプ同様にオフアキシスガイダー(OAG)内蔵です。

写真は内部構造がわかりやすいようオープンにしていますが
実機は片側のプレートがアルミ削り出しのカバー形状になります。

ごらんのとおり,ギヤ駆動です。
M92タイプはバックラッシュをなくすためタイミングベルト駆動を採用していますが
ベルトの場合,大きなモータートルクを必要とします。
今回ご紹介する小型タイプは光軸がオフセットし
中心にアイドラーギヤを配置できるのでギヤ駆動としました。
5ミクロンほどのバックラッシュはでますが,実用上は問題ないレベルです。
安価にできることと小型のモーターで駆動できるという大きなメリットがあります。


下の写真は望遠鏡側から覗いた状態で,撮影用のCCDとプリズムに反射した
OAG用のCCDが写っています。
アイドラーギヤも写っていますが製品はカバーで隠すことになります。

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このOAG部は手持ちのメーカー製に手を加えて仮に付けただけですが
製品は専用設計となり,Tネジで固定します。(回転調整機能あり)
また迷光防止のためプリズムに遮光板を付ける予定です。


OAGは組み合わせる撮影やガイド用カメラとフィルターホイールの有無などで
光路長が異なるため市販品を購入しても調整が大変です。
開発中のOGA内蔵のフォーカサーは対応する撮影とガイド用カメラを限定し
予め光路長を設定する予定です。

具体的には撮影用カメラはAtik製冷却CCDカメラ(フィルターホイール使用)
またはCanon製のDSLRで
オートガイダーはAtik-16ICまたはMEADEのDSIのみの対応となります。

また,光路長が大きくなるのでバックフォーカスが決められたレデューサーは
使用できません。(TOAレデューサーはバックフォーカスが大きくとれるので使えます)
上記写真の望遠鏡取り付け用M42P0.75ネジからCCD面までの距離は約70mmです。
kasai Trading様扱いのGS-200,250RCは専用レデューサーを併用して
テストを行う予定です。

今回紹介するOAG内蔵のフォーカサーは60,000円程度で
コントローラーは13,000円での販売を予定しています。(発売時期は9月頃)


なお,フォーカスコントローラーとして第一無線コンピューターシステム様から
β-SGRをご供給いただけることになりました。
カメラレンズ用などに限定されますが
セミオートフォーカスや優れた解析機能をご使用いただけます。
この件については改めて後日ご紹介します。

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2010年4月14日 (水)

ロスマンディ規格も確実に固定します

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先日発売しました新型のアリミゾは,アリガタ固定ブロックの蓋を廃止したうえで
かつ,強度を落とすことなくコストダウンや薄型を実現していますが
ロスマンディ規格のアリガタ(ダブテール)では別の大きな意味があります。

ロスマンディ規格のアリガタはエッジ部の幅が約75mm,エッジ角が60度です。
写真のように一般的な台形アリガタと異なり,アリミゾとは底面では接せずに
エッジ上部の張り出した部分がアリミゾに乗ります。
台形アリガタとは根本的に異なる固定方法です。
そのため,アリガタのエッジは低くアリガタ厚みの半分程度(5~10mm)です。
エッジ部はアリミゾの爪にかけてとめるイメージです。
(写真のセレストロン製は比較的エッジは高い(10mm)のですが
一般的なロスマンディ規格品は6mm程度で,GS-250RC付属品は5.5mmです。)

従来の固定ブロックに蓋があるタイプではブロック位置が蓋の厚み分
3mmほど低くなるので,固定ブロックはエッジ先端の半分ほどしかかかりません。
一番大事なエッジの付け根部は空いてしまいます。
付け根を固定しないので,薄いアリガタは“へ”の字状に反ってしまいます。


新型のアリミゾはロスマンディ規格“にも”使えるのではなく
長年ロスマンディ規格のアリミゾを製作してきた当社のノウハウを反映した設計です。
下の図のようにわずかなアリガタの反りも抑えるメカニズムなので安心です。
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2010年4月 4日 (日)

スプリュー

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スプリューは,ヘリサートとかネジインサートなど,他にも呼び名がありますが
アルミなどの柔らかい材料のネジ部の補強や
ネジ山を壊した場合の補修用として使用されるものです。
五藤光学のマークX赤道儀は度重なる分解にも耐えるよう使われていたし
タカハシの赤道儀のバランスシャフトねじ込み部や高度調整部にも使われています。

写真は大型のアリミゾDDS80と小型のDS45です。
当社のアリガタ押さえネジ部はすべてこのスプリューで補強しています。

またDS45では底面のカメラネジ部にも使っています。
アリガタを強く固定した時はこのネジ部に数百kgの力がかかるのですから
頻繁なアリガタの脱着に耐えるよう,充分な肉厚の素材とスプリューは必須です。
(DDS80,DS80のスプリュー部の肉厚は1.5D,DS45,DS65Nは1D)

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スプリューはネジ山を壊した時の補修にも使うと記しましたが
丁度よい写真がありましたので追記します。
下の写真はMS-5の鏡筒バンド取り付けタップ穴を補修した例です。
オーバーホール時に不具合があればスプリュー取り付けを行っています。
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2010年4月 1日 (木)

調整用シムリング

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冷却CCDカメラやフィルターホイールの接続はM42P0.75(Tネジ)などの
ねじ込み方式ですが,ねじ込んだままではカメラが回転しているので
ロックナットで回転角度を調整するのが一般的です。
ただこの場合ロックナットの厚みなどで数mmですが光路長が増えてしまいます。
また,回転と脱着もできるようテーパーリングを介する場合も
やはり光路長が増えます。

そこで,光路長は最短として回転角度を調整する方法をご紹介します。

カメラには写真のように全ネジのスリーブをねじ込み
フィルターホイールと直結します。接続に伴う光路長は「0」ですね。
このままではカメラとフィルターホイールは回転した位置で
ネジ込みが止まってしまうので回転はシムを挟んで調整します。

シムの厚みは0.05mm単位で調整できるのでピッチが0.75のネジの場合
24度単位で調整できます。
少し乱暴ですが締め付け力で調整すれば概ね希望の位置に調整できます。

また0.05mmの薄いシムを20枚積層した「積層シム」なるものもあります。
写真の真鍮製のもので,これは1枚ずつ剥がして厚みを調整できます。
もちろん剥がしたシートも利用できるので便利です。
この方法は一度固定したら外さないところに有効で
精度や強度を損なわないところも見逃せません。


ところで下の写真はシュミカセの接眼部に使われている接続方法を
CCDカメラに採用した例です。手持ちのパーツで作ってみました。
この場合少し光路長は長くなるので使用できる環境は限られますが
脱着や回転が用意なうえ,確実な固定ができます。
相手側は既製品にありますが,カメラ側につける方は探しきれませんでした。
光路長に余裕がある場合には理想的な接続方法と思いますが
いかがでしょうか。

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配管接続に使われるユニオン継ぎ手

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