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2012年3月

2012年3月31日 (土)

追尾精度の測定(P-2赤道儀)

先日開発中のジンバル赤道儀の追尾精度(Pモーション)をご紹介しましたが
同じ条件でP-2赤道儀のモーションを測定しました。

このP-2赤道儀は過去に何度か測定したり実際に彗星の撮影に使っていますが
今回の測定方法に間違いがないかを確認する意味もあります。
120331

結果は撮影に使った鏡筒の焦点距離が短すぎて良くわかりませんが
P-Pで10秒角強ですので以前の結果と変わりありません。
やはり圧倒的な高精度です。
焦点距離400mmで2~3Pixel(1Pixel=7.4μm)に収まっています。

120331_1

Pモーションの主な原因はウォームギヤの偏芯によるものです。
P-2赤道儀はウォームギヤの軸受けにボールベアリングを使っていないので
ギヤの加工精度がそのまま活かされます。
P-2や90S,Jシリーズなど,ここにボールベアリングを使っていない機種は
どれも高い追尾精度です。ユーハン工業のU-150もメタル軸受けです。
(Jシリーズの一部はスラスト力のみをニードルベアリングで受ける機種もあります)

これからも手持ちの赤道儀の追尾精度を同じ条件で測定してみますので
逐次ご紹介いたします。

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2012年3月30日 (金)

自由雲台をX-Y回転軸に改造

先ほどお客様から,ポラリエでレボルビング装置は使えないのか?
とのご質問をいただきました。

ポラリエなどの極軸のみのポータブル赤道儀では
自由雲台が赤緯軸相当とカメラの回転を受け持ちますが
ポラリエ(極軸のみ)+レボルビング装置では赤緯軸がないので使えません。
またポラリエ+自由雲台+レボルビング装置では
極軸廻りのバランスが取れずレボルビング装置のメリットが生かされません。

新たに赤緯相当の回転軸をつける方法もありますが
その場合,コストや極軸側のクランプをどうするかなどの問題もあるので
自由雲台で対応できないか検討してみました。
B12_03_30

できるだけコストを抑え実用性のある解決策は
上の写真のように自由雲台のボール部にバランスシャフトをつけて
自由雲台を赤緯の回転と極軸側のクランプフリー回転のにみに制限する方法です。

改造はボールの底面にバランスシャフト用のタップ加工と
ハウジングにこのシャフトが貫通する穴加工で30分もあれば完成です。

バランスシャフトがハウジングを貫通してボールにねじ込まれているので
ボールは赤緯軸としての回転しかできなくなっています。

構造上バランスウエイトは必要になりますが
如何なる構図でもバランスが取れるようになります。

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ポラリエが手元にないので開発中のジンバルシステムに
改造した自由雲台をつけていますが小型赤道儀ほどバランスは大切と思っています。
今回の改造は設備があれば簡単な作業なので
バランスシャフトも含め格安でご提供できないか検討いたします。

今回は手持ちのSLIK製品を改造しておりますが
一度分解するため現行品で同様の改造ができるかは不明です。
近日中に現行商品を入手して結果をお知らせいたします。

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2012年3月29日 (木)

日食遠征用ジンバル雲台の追尾精度

B12_03_291
日食の海外遠征用として開発中の追尾機能つきジンバル雲台ですが
ポータブル赤道儀として手軽に星野写真も撮れるよう
極軸望遠鏡も標準で装備する事は前回ご紹介しました。
写真のように前後2カ所固定で光軸調整を行ってから出荷します。

写真のテスト機では内蔵する駆動回路は組み込んでいませんが
極軸望遠鏡の視野照明は写真のように本体から直接ケーブルがでます。
明るさの調整は普通のボリュームを使い微妙な調整ができます。


昨夜は霞みがかった空でしたが仮の駆動回路で追尾テストを行いました。
撮影に使った機材はBORGの50FLとStarLighiXpressのSXV-M25Cです。
120329_1
この赤道儀はホイールの枚数が82枚なのでPモーションの周期は17.5分ほどです。
上の写真は天の赤道付近を20分撮影したものですが
Pモーションは綺麗なカーブを描いています。

比較星の離隔から計算すると±18秒角ほどのモーションです。
(写真中の数値(6.17,0.31)はDTPソフトで距離を測定したもので
値自体に意味はありません)

120329_2
これはCCDカメラのベイヤー配列からPモーションが解りやすいよう拡大した写真です。
このカメラは1Pixelが7.4μmでこれで計算しても上記と同じようなモーション値です

上は400mmのまま各5分露出で連続して撮影した6カットです。(Pixel等倍)
さすがに400mmでは流れていますが,その量は大きくても4~5Pixel程度なので
(Pモーション測定値の1/2程度)100mmなら1Pixel程度に収まりそうです。
モーションが滑らかなので,5分程度なら100mmでも歩留まり良く撮影できそうです。

心臓部はTGガイドマウントの流用品ですが,さすがにタカハシ製品ですね。

発売開始時期はGW前後で,価格は89,500円を予定しています。
BENROのジンバル雲台(GH-1P)や極軸望遠望遠鏡も標準付属です。
また,HPで紹介していますBENROフラット三脚や
開発中の小型極軸高度・方位調整装置とのセット販売も予定しています。

なお,このジンバル雲台を使ったフォークシステムは
1年ほど前にご紹介したベランダ赤道儀としても面白いと思います。

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2012年3月13日 (火)

レボルビング装置の出荷状況について

B12_03_13
レボルビング装置につきましては予定を遙かに上回るご注文をいただき
ありがとうございます。
天体撮影用レボルビング装置のニーズの高さに驚いております。
個人的には自由雲台での構図取りに不満があったので
レボルビング装置を製作しましたが共感いただけたようで嬉しい限りです。
 

現在第3ロットの20台ほどを組み立て中で一両日中に出荷いたします。
また第4ロットは30台に増産し今月末には完成予定です。
現在,ご注文いただいている方はこのロットで全てご納入できますので
今暫くお時間いただけると幸いです。
また,10台ほどはこれからのご注文分にもご対応できる予定です。

写真は,第3ロット分の摺り合わせ状況です。
回転部の固定は完璧なロックを実現するためにスリ割リング式を採用していますが
軽い操作でロックができることと,ガタを排除するため
ギリギリの公差で加工しています。そのため滑らかな回転を実現するために
1セットごと現物合わせでの摺り合わせを行っております。

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2012年3月12日 (月)

Hubo-i について-1

B12_03_12
AstroDreamTech社の赤道儀は,純正コントローラーのHubo-iが
ステラナビゲーターやSUPERSTARと通信ができなかった事などから
日本ではAGSシリーズ又はドイツ製のDynoStarX3を組み込んでいましが
それらが解決されたので(一部対応中)今後の輸入分からは
HUBO-i仕様が標準となります。

(Hubo-iの通信ボーレートは115,200bpsで,TheSkyは選択できますが
9,600固定のステラナビゲーターやSUPERSTARでは通信できませんでした。
SUPERSTARは対応すみでステラナビゲーターについては対応依頼中です。)
 
 
Hubo-iはDCサーボシステムを採用していますが,日本では
DCサーボは赤道儀の制御に向いていないのでは?とのイメージが強いようです。

以前も何度か触れましたが,DCサーボは工業用として広く採用されていますし
(特に高速回転を要求される制御系)
欧米では赤道儀の駆動にとしても広く採用されています。
ステッピングモーターに比べ振動が小さく,高速特性が良いこと
また効率が高いので恒星時駆動時の消費電流が小さくなります。
(HUBO-iは恒星時駆動音は非常に小さく,消費電流は12Vで約200mAです)

さらにモーターの電流値から負荷のかかり具合を計測・制御する事も容易です。
もちろんHubo-iはそれらの優れた特徴を備えており
昨年の星空研究会では実際にその滑らかな動きやレスポンスをご覧いただきました。
 
 
写真は以前韓国を訪れた時に見学したKAIST(カイスト)にあるHubolabです。

B12_03_121

その名前のとおりHubo-iはここで開発されています。
KAISTでは2足歩行ロボットが開発されていますが
一部のテストではHubo-iが使われていました。

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望遠鏡のコントローラーでロボットの手が握手をするのはとても不思議な光景です。

B12_03_122

ロボットの制御からすれば赤道儀の制御など簡単なものでしょう。
赤道儀は2軸ですが,ロボットには数十の軸があるそうですから。
B12_03_125


Hubo-iの詳細な機能については逐次ご紹介予定です。

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2012年3月10日 (土)

追尾つきジンバル雲台とフラット三脚など

B12_03_10

主に日食撮影用として開発している追尾つきジンバル雲台は
星野撮影時に便利なように2点支持式の極軸望遠鏡をつけました。
倍率は6倍で,暗視野照明つきのレチクルパターンは時角目盛式です。
北半球では北斗七星とカシオペアの位置関係からの目測で充分と思います。
南半球では,極の位置がわかるので十字線だけでいいのですが
倍率が低いことと暗視野照明の方が便利です。
極付近の3個の星はどれも暗いので照明をつけたり消したりしながら
見るとわかりやすいからです。
写真ではまだですが照明装置の電源は本体から供給し
明るさ調整用ボリュームは極望を覗きながらでも操作しやすい場所に設置します。

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先日からご紹介していますフラット三脚は製品化が決定しました。
どうしても金環日食には間に合わせたかったので
最終的な長さは試作と同じにする予定です。
ソフトケースなどの大きさにも影響するため早く決めなくてはならないそうです。
 
 
この三脚と追尾つきジンバル雲台は
6cm程度の望遠鏡や500mm程度の望遠レンズなら十分な強度です。
現在この強度を落とさない方位・高度調整装置を製作しています。
日食がメインなのと全体としてのバランスがいいので微動はつけない予定です。
一般的なポータブル赤道儀+ジンバル雲台や片持ちフォーク式の場合
重心が北に偏りますが,紹介するシステムでは高度調整軸のほぼ真上に来ます。
(高度30~40度において)
そのため,微動が無くとも0.1度程の精度で極軸の据付ができます。

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最後にレボルビング装置は納品が遅れてご迷惑おかけしております。
第3ロットの20台が3月15日,第4ロットの20台が3月末に入荷しますので
ご注文順に出荷し,今月中には全てのお客様にお届けできる予定です。

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2012年3月 8日 (木)

お客様から写真をいただきました

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レボルビング装置をご購入されたお客様から素晴らしい写真をいただきました。
ニュージーランドで撮影されたそうです。
写真はエータ・カリーナ星雲付近で,この領域の銀河は一際明るいところですね。

私が初めて見たときは,まだ薄明が残った夕方の空でも見つけることができました。
南天の空は2004年のリニア・ニート彗星のとき以来みていませんので羨ましいです。


***** 以下はお客様からいただいたコメントです。*****

『早速レボルビング装置をニュージーランド旅行に持って行きました。
心配の天気も写真撮影時は晴れ間ものぞき、念願の写真を撮る事ができました。
限りある時間の一発勝負でありましたが、構図を決める際はとても重宝いたしました。

南天の星はいまだに夢の様です。チャンスがあればまた挑戦したいところですね。』

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2012年3月 7日 (水)

BENROフラット特注三脚-1

先日からご紹介していました特注仕様フラット三脚の試作品が完成しました。
今まではフラット三脚とだけ紹介しておりましたが
今回,試作をお願いした三脚メーカーはBENRO社です。
(試作品なのでブランド名のシール等はない状態ですが)

天体撮影用に特化した仕様として
BENROのアルミ脚では最大径(32.4/28.6mm)のパイプ使用した2段タイプです。

試作品の仕様は以下のとおり。
・質量:約1.60kg
・収納長:690mm
・地上高:625~1,115mm
2段仕様なので同じパイプを使った4段タイプ(A3180T)より200g以上軽量です。

 
これから商品化に向けて検討を重ねますが,その場合一番悩むところは収納長です。
海外遠征を経験された方などに伺うと
「対角線方向でも構わないので長さを優先すべき」との声が大多数です。
私の個人的な意見も同じですが私のスーツケースに入れるとこのようになります。

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対角線方向なら余裕で入りますが,真っすぐにすると僅かに長すぎますね。
これが私専用の三脚なら,僅かに長さを犠牲にして真っ直ぐ入れる事もできますが
対角方向ならまだ余裕があるのでギリギリまで長くする方を選ぶでしょう。

写真のスーツケースは高さが約70cmのRIMOWA製ですが
特別大きいものではなく海外遠征用としては中型と思います。

今回の試作品の場合,スーツケースの高さが
・72cm程度より大きいなら真っ直ぐに
・高さが66~72cm程度の場合は対角線方向に
・それ以下は収納不可となります。

フラット三脚の場合対角線方向でもかさばらないので
今回の試作品の長さは若干短かったと思っております。
(従来タイプの三脚の場合,空間を占領するので対角線方向の場合
四角い箱状のものと干渉することが多いのですが
フラットの場合,厚みがないのであまり問題とならないと思います)

特注する目的は“伸ばさない状態での長さ”なのでそれを優先すべきですよね。
そうでないと特注の意味がなくなりますから。

製品化する場合,収納ケースのサイズが許せばもう少し長くなるかも知れません。
その場合,高さ70cm程度の中型のスーツケースで対角線収納を目処とします。
もちろん特注のスーツケースでないと入らないような長さにはしませんので
ご安心ください。

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