« 2013年5月 | トップページ | 2013年7月 »

2013年6月

2013年6月28日 (金)

星が見えないこの時期は-2

昨日の記事で,EF100mmF2.8MACROと
SIGMA APO MACRO150mmF2.8の比較について触れたので
本日改めて比較用に条件を揃えて撮影しました。

昨日は,EF100mmF2.8MACROは星像に関しては完璧とご紹介しましたが
今日得られた写真は,昨日とは全く違っています。
レンズを取り違えたかと思うほどで焦点像が歪に伸びていました。

おかしいと思い,一旦カメラボディから外してつけ直すと
伸びる方向が少し変わっているので
もしかするとISユニットが影響しているのかも知れません。
昨日の写真とは比較にならないほど悪化しています。


Ef100_macro_3
(掲載した写真に間違いがありましたので一部訂正しました)


一方,SIGMA APO MACRO150mmF2.8はEF100とは対称的にすばらしい星像です。
一般的に焦点外像では星の回りに紫色の収差がでますが
このレンズは全く出ません。焦点の星像もきれいです。

このレンズも手ぶれ補正機能があるので何度が脱着しましたが
星像に変化はありませんでした。

Sigma150_macro

本日のテストではEF100mmF2.8MACROは残念な結果となりました。
昨日と全く同じ条件で撮影していますが
もしかすると撮影側に問題があった可能性もありますので
参考程度にとどめていただけると幸いです。


|

2013年6月27日 (木)

星が見えないこの時期は

B13_06_27

梅雨なのでしかたないのですが,このところずっと晴れてくれません。
本物の星が見えなければ人工の星でもと思い,久々にコリメーターを組みました。
光軸を完全に調整できるよう少し手を加え
幾つかのカメラレンズをテストしてみました。

以前ご紹介した時は,検出感度を上げるため高倍率アイピースを用いて
眼視観測していましたが,データの定量性を重視し写真で残すこととしました。

撮影条件は以下のとおりです。

・コリメーター:タカハシFC60+10μm高精度ピンホール,白色LED光源
・撮影カメラ:EOS5DM2(IRカット改造)
・紹介する写真は上から焦点内蔵,焦点像,焦点外像
・全てレンズは開放で撮影

コリメーターでの撮影結果は実際の星野撮影と同じような傾向を示すと思いますが
コリメーターは短時間露出で撮影していることなどから
実際の星を長時間撮影した場合とは異なる可能性もあるので
あくまでも参考用としてください。

 


最初は先日カメラレンズ用フォーカサーで紹介したMAMIYA645用のA200mmF2.8です。
明るさを生かし,フルサイズ冷却CCDカメラと組み合わせて
ナローバンドでの撮影に使用するレンズです。

このレンズはAPOレンズですが,MAMIYAが誇る超色消しではないので
かなり大きな色収差が残っています。
焦点外像で星の周りに紫色の収差が出て,反対に内蔵側は緑色となります。
焦点像は星像が歪になりますが,実際の星の撮影と同じような傾向を示しています。
あまり良い星像ではありませんが
これでも銀塩時代のレンズとしてはかなり優秀な部類です。

645a200_2


 
次にご紹介するのはあまり知られてはいませんが
MAMIYA645用の120mmF4MACROです。
RB67やRZ67用のAPOレンズ同様,異常分散レンズを多用した超色消しレンズです。
F4と暗いのですが,以下で紹介するEF100mmF2.8MACROより
明らかに色収差は少なく(写真ではわかりにくいです)焦点像も遜色ありません。

645a120macro
 


最後は上記との比較のためにEF100mmF2.8 MACROの像を掲載します。

Ef100_macro
 
 
EF100mmF2.8MACROについては
後日,SIGMA APO MACRO150mmF2.8と比較テスト結果をご照会いたしますが
星像ではEF100(完璧です),色収差では圧倒的にSIGMAが勝っていました。


|

2013年6月23日 (日)

もう一つのレボルビング装置-開発状況

B13_06_231


レボルビング装置は,既に商品化しているリング型(RR-110)と平行して
J型(アルファベットのJの字状から命名)も開発していることは以前ご紹介していますが
何とか先が見えてきました。

J型は現行のリング型に比べ大きなカメラが使えることが最大のメリットですが
天文用として求められる完全な固定とスムーズな回転の両立が難しく
試行錯誤していました。


B13_06_233


試行錯誤の結果,最終的には上の写真の構造を採用しました。
見ていただければお解りのとおり半円形のアリガタを専用のアリミゾで固定するもので
原理はゴニオステージと同じです。
アリガタ・アリミゾを単にぐるっと曲げただけ?ですが,加工は極めて難しい構造です。

以下は3D図です。(クリックで拡大します)

4


B13_06_232


これは反対側からの写真ですが
構造上,シャッターやカメラの操作の邪魔になるものはありません。


また,このレボルビング装置はカメラの構図とり用にとどまらず
先日ご紹介した双眼望遠鏡の固定用としてもご使用いただけます。
双眼望遠鏡を赤道儀に搭載した場合,両眼の見口位置を水平にするよう
回転装置が必須になりますがこれで解決しそうです。


さらにポータブル赤道儀と三脚間に使えば,赤道儀の着脱と高度調整を行えますが
特別な高度調整機構はないので,圧倒的な強さで固定できます。


ただ,この構造は加工される側を回転して切削する必要があるので
製造コストが嵩みます。今後工程の見直しなどでコストダウンをはかり
秋には商品化できればと思っています。目標はアイソン彗星に間に合わせることです。


下の写真は高精度な赤道儀に搭載した状況ですが
小型のポータブル赤道儀とは異次元の使い勝手が得られると思います。

B13_06_230


写真は試作品で,カメラの固定部などは仮の状態です。
製品はカメラ用と双眼望遠鏡を搭載できる大型の2タイプを発売する予定です。
 

|

2013年6月21日 (金)

双眼望遠鏡用特注加工品

B13_06_211

お客様からの依頼で双眼望遠鏡用の鏡筒固定金具を製作しました。
私の鏡筒バンド用なので,段差をつけてバンドの平行がでるようにしています。


正直,このような特注加工品は設計から製作までそれなりの手がかかりますが
双眼観望派の方の熱いご要望でお受けしました。

私は双眼望遠鏡にはあまり興味がないのですが
双眼派の方々だけで集まるイベントもあり,熱烈なファンがおられます。
両方の目で見るのだから,本当の意味で自然な星の見かたなのでしょうね。

お受けしたからにはご満足いただけるようこだわりをもって設計しましたが
特に両方の光軸の正確さと軽量化に重点をおきました。

B13_06_212


|

2013年6月20日 (木)

H-40やFC50赤道儀のカスタマイズ

B13_06_203

過去に何度かご紹介している,H-40赤道儀のカスタマイズは
その後も継続的にご依頼をいただいています。

通常行うカスタマイズ項目は以下の3点です。
1.極軸高度・方位調整装置(XY-50-35H)の取付
2.一体型モータードライブ(AMD-1)の取付
3.赤緯体を切断しBENROのパノラマヘッドを取付
 

ただ今回はFC50赤道儀も含まれていたので,三脚取付部の改造も行いました。

B13_06_202

FC50赤道儀はH-40やスカイキャンサー赤道儀と基本構造は同じですが
無理な高度調整が採用されたため,その部分の強度に不安がありました。
今回はその部分を極軸ハウジングから切り取り
写真の極軸体保持金具を圧入・接着しています。
(写真右の灰色部品が切断した高度調整部で黒い部分が圧入・接着部)
なお,このAMD-1は特注でRJ11のガイド端子がついています。


圧入・接着する前はこんな感じです。

B13_06_201


H-40関連のアイテムは今後も継続販売する予定ですが
専用のXY50は次回入荷分で終了となります。
現在ご予約を受付ておりますが残りはごく僅となっています。


|

2013年6月18日 (火)

久しぶりの観測所

B13_06_182

少し前になりますが,久しぶりに観測所に行きました。
目的はいつものとおり建設作業で新しい薪小屋を作るためです。
親切な地元の方から大量の薪をいただきましたが
何としても夏前には収納しておきたかったので2日がかりで作り上げました。

手前に観測所があるので左側半分は写っていませんが間口は4mあります。
写真は一部の薪を収納したところですが,まだまだ大量の薪が残っており
薪割りが大変です。


そういえばまだ寒さが残っていた頃ですが写真のように鉄骨の溶接作業も行いました。
何かわかりますか?
天体望遠鏡のフレームのようですが,実は薪ストーブの煙突のサポートです。
季節風が強いときに煙が逆流するので,煙突を継ぎ足しましたが
そのサポートを溶接しているところです。

B13_06_183

 
継ぎ足した後はこんな感じになりました。
2階の手すりや屋根の塗装などまだまだいっぱい作業が残っています。

B13_06_184
 

昼間の作業でクタクタになるので,星の写真を撮る余裕はありませんが
このときは(薪小屋を作ったとき)良く晴れていたので庭先で固定撮影してみました。
あえて室内の照明を消さなかったので庭の雰囲気も出ていますよね。
作業後にシャワーを浴び,この景色を見ながらテラスで飲むビールは格別です。

B13_06_181_2


明かりを落とすとこんな星空が(たまに)見えます。
 
B13_06_185

(クリックで少し拡大します)

|

2013年6月17日 (月)

フォーカサー実写テスト

Ngc7000_13_06_15

撮影データー:MAMIYA A200mmF2,8絞り開放,SXVR-H36,バーダーHa(7nm)
600S×5,4,904×3,280ピクセルを1/2にリサイズ,ダーク,フラットは未処理


昨夜は久しぶりに星が出ていたので完成したフォーカサーの実写テストを行いました。

このフォーカサーはMAMIYA645マウント仕様で
対象となるレンズはA200mmF2.8のみです。
これにフィルターホイールをつけたフルサイズ冷却CCDを装着しています。

レンズマウント面とカメラ接続面の平行度を調整しただけで(数10μmオーダー)
特にスケアリングの調整などは行っていません。
周辺の星像が肥大していので調整の余地がありますね。


雲が何度も通過したので明るい星ににじみが出ていますが
ピント合わせに関しては予想どおり満足な結果が得られました。
紹介する写真は,フォーカス画面を見ながらツマミを回して手動で合わせていますが
ピントのピークを見つけるのみ1分もかかりませんでした。
バックラッシュは事実上「0」なのでピントのピークが容易に掴めます。


B13_06_172

このフォーカサーが必要とする光路長は約14mmです。
(内10mmはFLI互換テーパーマウントの厚み,3本のねじでFFを固定している部分)
MAMIYA645のフランジバックは64mmなので
フィルターホイールとCCDカメラ分が50mmほど確保できます。


B13_06_173

このフォーカサーはレンズとカメラの間隔を調整するので
フィルターホイールとカメラの光路長が上記の50mmより短い場合は
レンズのヘリコイドを少し伸ばして(無限位置から近距離側に回して)
この隙間を2~3mmまで接近させた状態で運用した方が便利です。
それに見合う専用の遮光材を準備します。

このフォーカサーは依頼分(+評価用)として製作しましたが
アルミ加工品などは3台分製作したので1台のみ材料の余剰があります。

価格はレンズマウントなど含み一式で75,000円で
フォーカスコントローラーは付属しません。(現在在庫が切れています)
過去に頒布したすべてのコントローラーが使用できます。
フォーカサーとフィルターホイールの接続部は
FLI製カメラの互換のテーパーリングです。

MAMIYA645用のA200mm専用となりますが
F2.8の明るさを生かしたナローバンド撮影用としてはおもしろいと思います。

なお先にご紹介しておりましたフォーカサーの内,FLIとQSI用は完売しました。


|

2013年6月11日 (火)

GP/SP用MTS-3モーターキット再販のご案内

B13_06_111


ドイツ製の自動導入コントローラー(MTS-3)を使った赤道儀の自動導入改造は
MTS-3の入荷数量の制約等で対象赤道儀を限定して行っていますが
今月入荷分は主にビクセンのGP/SP赤道儀モーターキットとしての
販売を予定しております。
コネクターの仕様を変更した以外は昨年の10月に案内した内容と同じです。

基本的にご予約分の販売になりますが,4~5台ほどは余裕があるので
興味のある方はHPからご連絡いただけると幸いです。

MTS-3のGP/SP赤道儀モーターキットの価格は82,500円です。
(為替レートの変動とコネクター仕様変更に伴い前回から改訂しております)
基本的にお客様でモーターを交換していただきますが
MT-1などのモーターをお送りいただければ無償で交換いたします。
なお,今回は高速モーター仕様の予定はありません。

 

ところで追尾テストの記事でも触れましたが
モーターや伝達ギヤの精度が赤道儀の追尾精度に大きく影響します。
特にギヤの偏芯の影響は顕著で安価なモータードライブの場合
赤道儀本来の追尾精度(Pモーション)を大きく落とす場合もあります。


B13_06_112

この写真はGP用のMTS-3を購入されたお客様が撮影されたものですが
左側はGP赤道儀に酷似した海外製赤道儀用の自動導入モータードライブで
右側はK-ASTEC製MTS-3で追尾した状況です。
いずれも同条件での30分間撮影された写真です。
(極軸のズレ具合の差からモーションを描いたカーブの長さが異なります)

同じ赤道儀でもモーターが違うだけでこれほどの差が出ていますが
左のモーターは約2分周期の波が本来のPモーションの波に重畳されていて
トータルでは右の2倍ほどの振れ幅になっています。
周期が短いので短時間露出でも影響を受ける事や
ガイド撮影時はズレが短時間で起き修正が追いつかないこともありそうです。

今回紹介するGP/SP用モーターキットで採用するギヤは写真のように
1ロット100枚で国内大手のギヤメーカーに特注しますが
ギヤの精度が赤道儀の追尾に大きく影響する事を配慮した仕様のものです。


|

2013年6月 4日 (火)

中判レンズ用フォーカサーのテスト

B13_06_031

カメラレンズ用のフォーカサーについては先日からご紹介していますが
今回紹介するのは中判レンズ用の特注品で,1台のみの製作です。

特注仕様の場合,焦点位置や各部の干渉,スケアリング調整の容易さなどは
実際に撮影してみないと解らないこともあるので確認を行いました。
昨夜は透明度が高く,テストにはもったいないほどの空でしたが
梅雨明けまでには仕上げたいので晴れ間を逃せません。

B13_06_032

紹介するシステムはMAMIYA645用の200mmF2.8と
フルサイズカメラの組み合わせです。明るさを活かしたナローバンド撮影用です。

この645用のレンズは星像ではデジタル用に設計された最新のレンズに劣りますが
フランジバックが長いのでフィルターホイールが使えることが大きな魅力です。
色収差は残りますがナローバンド用として使うので問題とはなりません。

ナローバンドの場合,レンズの有効径を生かすために絞りたくないのですが
開放でも写野周辺まで星が丸く写るかが重要です。

このレンズはIFレンズでないので星像が歪になる傾向が少ないようです。
以前,メーカーの設計の方に尋ねたところ,IFレンズは固定されたレンズに対して
IF系が移動するのでレンズの芯や傾きの影響が残るとのことでした。
以前所有していたZuiko250mmF2は,ヘリコイドを近距離から∞側に回した時と
その逆では明らかに星像が変わっていました。

B13_06_033


フォーカサーとカメラの接続方法ですが,実際に冷却CCDで撮影していると
パソコンとの接続を保ったままで望遠鏡からカメラを取り外す事があります。
できれば冷却したままで一時的に取り外したい時などです。

2インチスリーブでの接続なら容易ですが,スリーブの遊びが多いので
重量のあるカメラでは使いたくありませんし
ねじ込み接続は強度や精度は完璧ですがケーブルが絡むので取り外せません。

そこでフィルターホイール側に写真のようにテーパー状の接続リングを取付ました。
規格はFLIのカメラと同じでレンズ側は他のフォーカサーと同じです。
これでカメラの着脱が容易になりますが,一番のメリットは回転ができる事ですね。

このテーパー接続部は光路長を10mmしか消費しないのでRH200でも採用予定です。
RH200はM72ねじ込み部からのバックフォーカスが70mmほどあるので
このアダプター経由でフィルターホイールやカメラを接続してもまだ余裕があります。


ご予約いただいているSXVR-H18(694など)用とQSI用の量産分は
(と言ってもそれぞれ4台ほどですが)現在製品の製作中で6月末納品予定です。


|

« 2013年5月 | トップページ | 2013年7月 »