
従来型のMTS-3はディスプレイが付属しないためにパソコンの併用を推奨して
きましたが,本年入荷分からはディスプレイが内蔵されたため
今までできなかった単体での自動導入やPEC機能が使えるようになりました。
(PECはボタンの操作とLEDの色でも判断できるのでディスプレイは必須では
ありませんがやはり表示がないと不便でした)
この内,PEC機能についてはPモーションが大きいハーモニックドライブ赤道儀
では大変魅力的な機能で,CRUX用として開発されたTITAN TCSでは大な効果
を発揮しています。
そこでMTS-3のPEC機能についても詳しい調査と実機テストを行ってみました。
もしも実用的ならハーモニックドライブの日食遠征用GE140HDでも使えます。
実はMTS-3はリアルタイムクロックのバックアップ電池を内蔵していないので
PECの学習結果を保持できず,できるのは電池を内蔵したDynoStar
(MTS-3の上位機種)だけと思い込んでいました。
PECの有効性は理解できますが,その都度学習させる必要があれば
実用的ではなく興味がありませんでした。今回詳しく調べたり実機テストを
行った結果,MTS-3も学習結果を保持できる事が解った次第です。
以下は上の写真の構成で,PECの有効性を確認したガイドグラフです。
PECを有効にした状態で,前半1/3ほどはガイドを行い
途中からガイドを止めていますが(DECのカーブがズレて行くところから)
PECの効果で±20~25秒角ほどあったPモーションが大きく改善されています。
途中で電源を切ったり,高速導入などを繰り返しましたが
概ね±5秒角,最大でも±10秒角以下に収まりました。
PECとガイドの干渉も見受けられないのでPECは常時ONで良いでしょう。
(Pモーションが大きい赤道儀でもガイドすれば撮影に支障ありませんが
雲の通過でガイド星を見失った場合PECが効いていれば大きく暴れません)

一度オートガイドを行い学習したPEC情報は以下の操作を行わない限り
保持します。(PECが有効な状態ではLEDが常に赤く点灯します)
1.ドライブをOFFにする前に供給電源が遮断された場合
2.モーターが脱調した場合
3.モーターを接続せずにMTS-3の駆動操作を行った場合
2についてはギヤヘッド付の駆動モーター+ハーモニックドライブではまず
あり得ません。
また3についても電源とモーターが一括ケーブルになっているのでそのような
操作は防げます。
1のみ注意すれば写真の300mmでもノーガイドで撮影できそうです。
なお今年出荷した一部のディスプレイ内蔵MTS-3はPECの事前設定(RAMG)*
がなされておりません。
PECを使用される場合は「PEC」→「RA-Motor*Gear」の確認をお願いします。
* RAMGは以下の駆動系の減速設定で添付の設定表に記載しております。
モーターギヤ比×アイドラーギヤ比×ステッピングモーターのステップ数
また添付した直訳版の取説ではPECの操作はわかり難いようです。
近日中にPECに関する簡易マニュアルを作成しますので少しお時間ください。
英語版のMTS-3マニュアル(PECは20ページに記載)はこちらを参照ください。
写真のGE140HD(写真は評価用の試作機)やP2-GOTO,,90S-GOTOなど
ハーモニックドライブを採用する赤道儀は40台ほどのご予約を頂いております。
2018~2019年前半の販売や改造はこの予約分で手一杯な状況なので
当面の間は新規のご予約は休止させていただきます。
なお納期が短いハーモニックユニットがセットされたステッピングモーターは
H-40やスカイグラフの自動導入改造用として上記とは別に検討しています。