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2020年12月

2020年12月31日 (木)

2020年を振り返って-公共天文台などの自動化

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2020年を締め括るのは天文台仕様のTITANコントローラーによる自動化です。生産終了したAGSシリーズの後継機として,2020年は4天文台(30~65cm)の自動化を行いました。

天文台仕様TITANの主な機能は以下のとおりです。

  1. 原点センサー(光学式)によりホームポジション(格納)への復帰とホームポジションからの自動導入
  2. リミットセンサー(光学式)により東西南北方向の動作制限
  3. 降雨信号受信→望遠鏡格納動作→格納完了後スライディングルーフへ閉鎖許可発信までのシーケンス機能
  4. 専用ASCOMドライバーによりASCOM制御に対応
  5. 5相ステッピングモーターに加え,ACサーボモーターにも対応

 

以下は年明け早々納品するミカゲ260B赤道儀で,両軸へ各種センサーの設置とセンサーカバーを取り付けているところです。同時にオーバーホールも行っているので両軸は分離しています。

来年は個人のリモート天文台用として,上記の1~5の機能を有したEM-200,NJP,EM-500用コントローラーの発売や,両軸ハーモニックドライブ式のフォーク赤道儀(FE3225)を製作予定です。

なお以下の260Bクラスの改造費用は,最初の写真にあるピラーパネル(作業中の状態)両軸5相ステッピングモーターなどを含め,500,000~600,000円程度です。(出張作業費含まず)

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2020年12月30日 (水)

2020年を振り返って-DS38Nの発売

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今年はM8ボルト2本固定を採用したアルカスイス規格のDS38の後継機種としてDS38Nを発売しました。手前の2台がDS38N_OLとDS38R-60で奥がDS38とSDS38です。

当方で製作しているアリミゾは基本に忠実な下図のA点でアリガタを押し,対辺側のB点とC点の3点で固定する構造ですが,DS38のみ市販品を流用したためこの構造になっていませんでした。

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3点の場合A,B,C点で安定してアリガタを掴みますが,押す側と対辺側共に直線のDS38では全面がバランス良く接するとは限らず,極端に言えば,力がかかるのは限られた2点になります。

SDS38では3点保持に改良していましたが今回DS38Nも3点となったため全てのDSシリーズ3点となりました。なおDS75-40は4点保持になりますが,押さえ側を2点とした目的はヒューマンエラー防止です。

 

3点で保持する場合,下図のようにアリガタを「く」の字に曲げる力がかかりますが,それによる変形(撓み)は皆無(1/100mm以下)です。当然ですが,アルカスイスプレートより幅,厚みともに大きいDP45シリーズやDP75シリーズも1/100mm以下です。

(以前のDP80シリーズのアリガタは現行のDP75シリーズより肉厚でしたが,実使用での撓みは無かったので軽量化を目的に,肉厚を抑さえたDP80-xxxLシリーズに変更しています)

DS38Nはここで紹介したような底面で接しないアリガタの固定にも対応する設計です。他にも幾つかの特長がありますので追って紹介させていただきます。

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2020年12月29日 (火)

2020年を振り返ってーゴニオ赤道儀

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今年はゴニオステージを極軸に使うポータブル赤道儀の構想やっと形にできました。 思いついたのはブログを始めた頃で13年も経ってしまいました。

ゴニオ赤道儀は構造上90分程度しか連続追尾はできませんが,これまで紹介した星景写真の他にちょっとした観望にも便利です。

当初はゴニオステージの強度を控えめに評価していましたが,実際に鏡筒を搭載してみると予想以上の強度でした。写真の10cm屈折でも全く問題ない剛性なので,これなら10cm屈折で日食の撮影もできそうです。

以下は昨日紹介したEM-200DHDで採用したSHG20型ハーモニックドライブと今回のゴニオ赤道儀用の光学ステージで何れもクロスローラーベアリング保持です。

大きさだけの比較ですが,SHG20は約20kgfmのモーメント荷重を許容できるので,ゴニオの1kgfm程度*のモーメント荷重なら余裕でしょう。(*5kgの鏡筒を保持中心から0.2mの位置搭載した場合のモーメント荷重)

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2020年12月28日 (月)

2020年を振り返って-EM200DHD改造

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2016.10月のP-2赤道儀ハーモニックドライブ自動導入改造を皮切りに,翌年2017.8月には2機種目となる90S赤道儀で同様の改造を行いました。何れも部分微動の赤緯軸を切断し,ハーモニックドライブと換装するという荒技で自動化しています。

それに対して今年着手した3機種目の,EM-200の赤緯側ハーモニックドライブ改造は軽量化と搭載能力アップが目的です。同時に赤緯軸のバックラッシュも完全に排除しています。

写真のように赤緯軸を抜き取りハーモニックドライブに換装することで4kgほど軽量化できます。同時に不動点からの鏡筒接続面までの距離も大幅に短縮されるため,バランスウエイトも改造前より減らせ,結果的に25kg以上の搭載を可能としました。

ちなみにEM-200改造で採用したハーモニックドライブは同社のSHG-20-160-2SOです。Rainbow Astro社製のRST300で両軸に採用された波動減速機と同じクラスですが,RST300の搭載実力からみればEM-200の改造部は50kg以上でも耐えるでしょう。

 

なお,EM-200の赤緯軸ハーモニックドライブ改造は予想を上回るご依頼を受けました。現時点でバックオーダーが解消されていないので,当面の間受注は休止させていただきます。

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2020年12月22日 (火)

低重心の高度方位調整装置 XY60の紹介-4

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写真はXY60の0°仕様にDS38N経由でスカイグラフを載せてみました。フルサイズカメラ+200mmF2を搭載していますが全く支障のない剛性です。

スカイグラフのように極軸の傾斜角を持ったポータブル赤道儀は,ただでさえ重心が高くなりますが,低重心のXY60では最小限に抑える事ができるので振動を抑えられます。

今回紹介するスカイグラフなどここ1~2年で開発や評価に使った機材を売却予定です。逐次ここに売却品をアップしますので興味のある方はご覧いただけると幸いです。

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低重心の高度方位調整装置 XY60の紹介-3

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紹介中のXY60は写真のポラリエUなど,小型のポータブル赤道儀とのマッチングを最優先に開発しましたが,これまで長年にわたって製作してきたXY50やXY-50Dなど,ポータブル赤道儀用極軸高度・方位調整装置の集大成です。振動や撓みなどの剛性と相反する軽量化の両立を追求した結論です。

 

以下は最初に商品化したXY50の強度アップ版のXY50DとXY60の比較です。

見てのとおりXY60はXY50Dに対して半分ほどの大きさですが剛性は互角です。
重さもXY50Dから300gほど(XY50D:662g→XY60:373g)軽くなっていますが,低重心化に加え,高度可動部の一体化や高精度加工が総合的な剛性に大きく寄与しています。(XY60は国内生産品です)

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以下は2020年に商品化したもので,左からXY60,XY62,XY70-35です。

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なおXY60の底面はUNC3/8タップに加え,直径35mmの位置にM6タップがあるので,当方で販売したPTP-C22でつかう場合は以下のように回転止めができます。(一部のロット分は適合しません。適合するのは以下の写真のように3カ所の開口部が中心から17.5mm仕様のみです)

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2020年12月20日 (日)

木星と土星の接近

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木星と土星は22日の再接近に向けどんどん接近しています。写真の10cm屈折では同じ視野に見られます。

これは昨夜D810A直焦点で撮影した写真ですがどうにかそれと解る程度です。ゆらゆらと揺れていますが肉眼で見た方が感動的ですね。

今日もよく晴れていますが下り坂の予報です。せめて今夕までこの天気が続いてくれるといいですが。

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2020年12月19日 (土)

低重心の高度方位調整装置 XY60の紹介-2

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1月前に紹介していた低重心の極軸高度・方位調整装置XY60が完成しました。前の記事で紹介したとおり,ポータブル赤道儀の極軸高度方位調整以外に,ツイン鏡筒の光軸調整用としてご使用いただけます。

上の写真は強度を試すためにDS38R-60を取り付けたXY60(オプションの両軸クランプ併用)に92mm屈折望遠鏡を搭載した状態です。鏡筒の重さは5.5kgありますが極めて低重心なので振動もなく実用上何ら問題ありません。

XY60は12/25日の発売で価格は税込み24,200円です。ご購入後の変更も容易ですが,ご注文時点で35°か0°をご指定ください。また両軸のレバークランプは1,375円です。ポータブル赤道儀の極軸調整用の場合は不用です。

 

以下は右手前がXY60の35°仕様,左がそれにDS38R-60を装着しています。奥はツイン鏡筒用として片方にDS38Nを,もう片方にXY60の0°仕様+DS38R-60をツイン鏡筒用プレート装着しています。(写真は流用品ですが2021年早々専用品を発売します)

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XY60の本体重量は約370g,DS38R-60を装着しても500gほどですが最初に紹介したとおり,5kgクラスの鏡筒を余裕で搭載できます。

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以下はMark-X用プレートを装着した状態です。ベースモデルでの運用程度なら充分な強度です。こちらは2個のみですが26,400円で販売いたします。 Mark-X用プレートは完売しました。1/4日追記

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2020年12月16日 (水)

天文用アルカスイスクランプDS38Nについて-4

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DS38Nシリーズ3機種4タイプの最後となるDS38R-60が完成しました。写真手前中央の円形タイプで右後方のXY60などとの組み合わせに最適です。

タイプによって外径が異なりますが,プレート押さえ部は全て共通なので固定力は変わりありません。プレートとは一般的なアルカスイスクランプと異なり3点で接する構造なので高い保持力を発揮します。従来のDS45を上回る保持力です。

今回のDS38R-60も含めオレンジレバータイプの出荷は12/25日の予定です。

なおXY60とDS38R-60のセット販売も行います。価格は税込み34,100円(送料無料)です。セット品の出荷も12/25日を予定していますが年内の出荷分は20セットほどに限られます。(DS38R-60はDS38Nに変更可。12/15日発売で案内していたXY60は材料調達の都合で少し遅れています)

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2020年12月12日 (土)

天文用アルカスイスクランプDS38Nについてー3

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天文用のアルカスイス規格クランプはDS38Nに加え,円形のDS38R-76を追加しました。型番のとおり直径76mmの円形で,EM10/11に赤道儀ヘッドとジャストフィットします。

また左の写真のようにパノラマヘッドとのマッチングも良好です。来週には一回り小さいDS38R-60が加わり,この3機種で年内のDS38シリーズのラインナップはひとまず終了します。

奥の四角いDS38Nは既に販売中の黒のノブタイプとオレンジのレバータイプを指定できますが,円形タイプは基本的にオレンジレバータイプのみです。

価格(税込)や発売時期は以下のとおりです。(送料は何れも一律370円です)

  • DS38N-BK(Black Knob):9,900円(在庫品,納期3営業日)
  • DS38N-OL(Orange Leber):9,900円(12/25日発売)
  • DS38R-60:9,900円(12/25日発売)
  • DS38R-76:11,000円(12/25日発売)

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