赤道儀の追尾エラーを修正(計測)する TDMについて-4
これまではTDMを計測器として追尾精度の測定に用いましたが,今回は本来目的の制御装置として試みた例です。個人的にはこの装置は追尾精度があまり高くないハーモニックドライブ赤道儀にとって極めて有効と思っています。
今回は写真のように中空型のハーモニックドライブ(SHD25-160-2UH-LW)を使った模擬の極軸体にTDMのエンコーダーを装着しています。エンコーダーは極軸の南端に付けるために中空型のハーモニックドライブが必要になります。右上側が出力軸です。
以下がTDMの動作状況で,前半8分間(ウエーブジェネレーター1回転に要す時間は約9分)ほどは制御なし,その後は制御しています。
制御なしでのPモーションはTDMの計測範囲±15秒角を振り切っていますが,制御時は概ね±2秒角に収まっています。制御中でも約4.5分周期で振れているのは大きなモーションを完全に補正できないためで,この現象は恒星を使ったガイド撮影でも現れます。
こちらは,マイクロステップ中間精度の確認のためにコントローラーをMTS-3(1/64分割)からTitan(1/256分割)に変えた状態です。小刻みな振れが小さくなっていますが大きな差はないようです。
また17分以降はTDMの制御を,1秒周期,1秒角不感帯から0.125秒周期,0.5秒角不感帯に変更しています。変更後は±0.5秒角ほどで,1秒角を超える事はないようです。
ハーモニックドライブの急峻な挙動を抑えるには高速制御が有利かも知れません。(サンプリング周期とグラフの連動ができないため,後半は時間軸が1/8になっています)
TMDの追尾精度改善効果や運用性は期待を大きく上回るものでした。ハーモニックドライブ赤道儀用としては,高精度エンコーダーに対応した赤道儀駆動装置もありますが,一般的な駆動装置+TDMも選択肢になりそうです。今後評価用の赤道儀として組み立て,デザガイド時の挙動などを実際の星で確認してみます。
備忘録ですが,制御周期0.125秒で不感帯0.5秒角(上),1秒角(下)の場合です。(時間軸は1/8になります)
以下は長時間記録のために制御周期1秒(不感帯0.5秒角)のデーター。1秒角をクリアーし4.5分周期の波もほぼなくなっています。ハーモニックドライブはレスポンスが良いので不感帯は0.5秒が良いようです。(12分の乱れは机にショックを与えたため)
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