雑感

2017年6月 4日 (日)

FC-100DLの試写

B170603

FC-100DLの眼視性能の高さは2年前の「星を求めて会場」で実感し
100本限定につられて入手していました。
入手後使わないままでしたが,再販が決定したので(今回も限定)
参考用として気になる写真(星野)性能も評価してみました。

 
以下は写野中央付近を1,200×1,200ピクセルで,四隅を400×400ピクセルで
切り出した写真です。(追尾エラーで少し星像が伸びています)

色収差は感じられずフルサイズ周辺まで良好な星像です。
FSQ-106EDは使用した事はありませんが,メーカー発表の
FC-35レデューサーを併用すれば「FSQ並みの性能」は間違いないでしょう。

Fc100dl_rd


ただ以下のように四隅に強いケラレが発生しています。
これは開口径の小さいニコンマウントの影響ですが,同じNIKONマウントでも
VSD100ではここまで強いケラレは発生しません。
PENTAXの設計が踏襲されているVSD100はカメラレンズに近いからでしょう。
(そのためか小さな後玉の口径食により輝星の割れが発生するようです)


Fc100dl_rd2

【撮影データー】
使用カメラ:NIKON D810A,ISO3200,60秒,FC-35レデューサー併用(F5.9)
屋上設置の五藤光学8cm赤道儀搭載


NIKONマウントでのケラレは気になりますが,個人的には長焦点を活かす意味でも
DXフォーマットで使いたいと思っています。
焦点距離が伸びる訳ではありませんが,フルサイズ1,000mm相当の画角となるので
大型の銀河や球状星団などに適すでしょう。

比較的軽量な上,2枚玉なので輸送中の光軸ズレの心配がありません。
次のオーストラリア遠征ではタランチュラ星雲をアップで狙ってみたくなりました。
眼視と写真性能を高い次元で両立できる鏡筒なので遠征で使うのも面白そうです。


|

2016年11月29日 (火)

シリカゲルの除湿能力

CCDカメラのウインドウガラス曇り防止用などとして採用した,シリカゲル
パックの除湿(吸湿)能力について考察しました。備忘録としてアップします。

このパックには120gのシリカゲルが入っていますが
以下は3段重ねで乾燥する前後の重さです。乾燥後は34g軽くなっているので
1個当たり11g(シリカゲルの重さの約10%)の水分を吸湿してた計算になります。

一方,飽和水蒸気量は15℃の場合,1立方メーター当たり12.8gなので
120gのパック1個で,湿度100%の空気を900リッターほど乾燥できる計算です。
あくまでも吸湿した水分量からの計算ですが思った以上に吸湿しますね。
 
パックは専用の温風乾燥機で行いますが,3個の場合3時間ほど要します。
乾燥の度合いは,シリカゲルの色でも判断できますが,完全に乾くとパック
上面の温度が上昇し内部に水分が残っていない事が解ります。
電子レンジでの乾燥でここまで水分を飛ばすのは難しいのかも知れません。

B16_11_291


B16_11_292


|

2016年9月 4日 (日)

15cmコレクティッドダルカーカムのフォーカサー

B16_09_04_2

昨日紹介した15cmコレクティッドダルカーカムはフォーカサーも工夫されています。
昨日アップした写真にも写っていましたが改めて紹介します。

上の写真で「コバンザメ」みたいに鏡筒に張り付いた部分が
マイクロメーターを使ったフォーカサーで,内部に連結され副鏡を移動させます。
(ピントの祖調整はドローチューブの抜き差しで行います)
以下はマイクロメーター部の拡大です。

B16_09_041


カセグレン式を採用されたのは高精度なフォーカサーが適応できるからでしょう。
副鏡を動かすので,重たいカメラをつけてもスケアリングズレがおきないことは
昨日紹介した隅々まで均一な星像が物語っているようです。

写真の冷却CCDカメラ(STL-11002)はセルフガイドができるのでガイド鏡は
使用していませんが,取っ手部がガイド鏡になるなどアイデア満載ですね。
 

ハーモニックドライブの赤道儀やこの鏡筒は商品化される模様です。
具体的になりましたらまたご紹介しますが,どちらも興味が尽きませんね。


|

2016年6月 4日 (土)

信頼できる極望とは?

B16_06_041

このところのPole Masterブームで存在感の薄い極軸望遠鏡ネタですが
極軸内で回転できる極望の信頼性についてちょっとひとこと。

極望の構造についてはこれまでに度々紹介していますが
大きく分けて以下の2タイプです。
 

①クランプフリーで極軸が回転する赤道用
 タカハシP-2やビクセンGPなどがこのタイプですが,極軸を回転させながら
 パターンの中心が目標からズレないようにするだで高精度な調整が可能。
 一度調整すれば極軸と極望(パターン)の相対位置は変わず信頼できます。


②クランプフリーで極軸が回転しない赤道儀用
 五藤光学のスカイグラフやケンコーのスカイメモRなどがこのタイプですが
 クランプフリーで極軸を回転できないために
 極望を単独で回転できる構造になっています。
 レチクルパターンの中心は極望の回転軸に合うよう調整されますが
 極望と極軸の光軸は加工精度に委ねられ調整機構はありません。

このタイプの場合,ウォームの噛み合いをフリーにして極軸を回転させれば
極軸と極望の光軸があっているか確認できますが
仮にズレていたとしても通常は調整できません。(最後に補足説明あり)

 
写真は試しにAP赤道儀に②のケンコータイプの極望を装着してみました。
AP赤道儀はクランプフリーで調整できるので①でもいいのですが
ケンコー式は根強い人気がありますしね。

極軸がクランプフリーで回転するので,以下のように極望の対物側に
光軸調整ネジを付けると②タイプの欠点を補い完璧な光軸調整が可能です。
極望単独での回転に支障がないように,光軸調整ネジが当たる部分には
樹脂製のスリーブを入れています。

個人的には信頼できる極望があればPole Masterは不要?と書いていますが
こうすれば正に信頼できる極望のできあがりです。


B16_06_042


 
②タイプの極望の光軸についての補足
スカイメモRなどはオーバーホールの際に極軸の回転をフリーにして点検しますが
極軸と極望の光軸ズレが見受けられることがあります。
その場合,無限遠とレチクルの視度を合わせる部分(ケンコーの場合銀色のリング)
を緩めて対物側を振れば調整できます。
少し緩めただけで光軸は大きくズレるので根気が必要ですが充分に追い込めます。
逆に言えばこの調整部を緩めると光軸は完全にズレてしまうので注意が必要です。

極望で極軸を正確に合わせたつもりでも,赤緯方向に流れるようであれば
疑ってみる必要があるでしょう。Pole Masterと比較するのも有効です。
(遅れておりますがスカイメモR(RS)用アダプターは7月発売予定です)


|

2015年6月14日 (日)

Wynneコレクター

B15_06_14


ビクセンからR200SS専用のWynneコレクター(コレクターPH)が発売されました。
高性能なWynneタイプコレクターが6万円ほどなので大きな反響のようです。


ただWynneコレクターは筒外焦点距離が長くなるのでフォーカサーへの負担が
大きくなります。特に重たい冷却CCDでの撮影は不安です。

写真のWynneコレクターは何れも3インチのEDコレクターです。
長い方の全長は180mmですが,それに加えバックフォーカスが79mmもあるので
ピント面は鏡筒側面から25cmほどになります。
(写真の3インチコレクターは全長の半分ほどがドローチューブ内に収まります)
そこに4~5kgほどの荷重がかかかれば接眼部の撓みは避けられないので
フィルターホールとの接続部を保持するなど何らかの対策が必要でしょう。
 


R200SS専用のWynneコレクターが発売されたためか
以前頒布していたフォーカサーの問い合わせが増えています。
 
R200SS+コレクターPHでは上記ほどの引き出し量ではありませんが
重たい冷却CCDでの撮影では接眼部など撓みが懸念されます。
電動フォーカサーを望まれるのは冷却CCD撮影が前提と思うので
申し訳ありませんが,上記理由で再頒布の予定はありません。


|

2014年9月15日 (月)

WO Star71 F4.9の広いイメージサークル

Ngc700_1024_2

このところWO Star71関連の記事が集中していますが
今日は,13日の夜に試写した北アメリカ星雲付近のHa写真を紹介します。
(クリックで拡大。25%にリサイズ。レベル補正などは行っていますが
フラット処理や周辺減光補正は行っていません)

先日も冷却CCDで撮影した写真を紹介しましたが
マウント部でのケラレがあったのでマウントを作り直して撮影しました。
月が大きい時期なので早い時刻にL画像を,その後Haで撮影しています。


100%のL画像(ノーフィルター)はサイズが大きいのでここにアップしています。
(上のHaと同じ構図ですが上下が逆になっています)


撮影して驚いたのは,その広大なイメージサークルでフルサイズオーバーの
STX16803(約37mm角)のコーナーでも綺麗な星像で光量も豊富です。
試写では露出時間や撮影コマ数が少ないので
強引な強調処理を行っていますが殆ど周辺減光を感じません。

この鏡筒の周辺光量は,55φで90%と聞いていますが
STX16803(写野円52φ相当)での試写結果から間違いないでしょう。
PENTAX645Dでの撮影を想定した
ビクセンVSDでさえ55φで70%なのでそれを凌ぐ光量です。

私も含め,フラット処理が億劫な人には大変魅力的な鏡筒ですが
ここまで性能がいいと,より大きな口径を期待しますね。


|

2014年8月31日 (日)

WOStar71 F4.9試写

B14_08_31

昨夜は雲が多いながらも少し星が出ていたのでWOStar71 F4.9の試写を行いました。
カメラはEOS5DM2(IR改造)でISO400,60秒露出したCR2(SI7で現像)の生画像です。
(右下が最周辺,クリックで拡大)

紹介するのはフルサイズ最周辺のピクセル等倍画像ですが期待どおりの星像です。
マウント部に起因すると思われるスケアリング不良がありましたが
これは調整で解決するので一番良いところを掲載しました。
もちろん写野中央部の星像は大変良好です。

色収差についてもピント位置前後での色の出方から少ないと感じましたが
得られた写真を強調処理すると,特定の星の回りが異常に赤くなるようです。
上の写真の左下の星にも現れていますが,これについては後日調査します。

特記は周辺光量の豊富さです。
カメラマウントから対物レンズ側を見ると,口径食の少なさがわかりますが
得られた写真でも周辺減光は極僅かでした。


下の写真は対物側から撮ったものですが幾重もの遮光環が見えます。
さすがに無数は大げさですがざっと数えても25枚ほどありそうです。
安価な望遠鏡は遮光環を省略し,植毛紙などで代用しているようですが
コントラストに大きく影響すると思うので光学性能の一部でしょう。
特に野鳥など,昼間に撮影する対象では大きな効果が期待できそうです。

良く見ると間隔が詰まったところがありますが
4枚目と5枚目のレンズの間かも知れません。

B14_08_29

|

2014年5月23日 (金)

2014 南天星見ツアーの結果-Kowaの双眼鏡

B14_05_23

今回の南天ツアーにはKowa様のご厚意で双眼鏡を貸していただきました。
写真の手前のGENESIS44PROMINARとGENESIS33PROMINARそれに
後のHIGH LANDER PROMINARの3台です。

何れもフローライトまたは同等のレンズを搭載した高級機で
見え味は素晴らしく,さすがに世界最高レベルと評価される性能のようです。

私にはその性能を詳しくレポートできる技量はないので
とにかく良く見える双眼鏡としか表現できませんが
一番惹かれたのは合焦範囲が広く裸眼でもピントが合うことでした。

あくまでも私の視力での話ですが,今まで見た多くの双眼鏡は
裸眼ではピントが合いませんがGENESISやHIGH LANDERは余裕でした。

他社製も含め,高級双眼鏡はアイポイントが高いので
メガネをかけたままでも全視野を見られますが
銀河系中心部の散光星雲などをジックリと見る場合メガネは邪魔ですよね。


|

2013年10月 6日 (日)

ラック&ピニオンVSヘリコイド

B13_10_061

昨日から「第二回九州大観望会2013(星宴)in星野村」に参加してきました。
あいにくのお天気でしたが,深夜2時頃から晴れてきて
透明度の高い綺麗な星空(と美味しいお酒)を堪能できました。

中でも,茨城県から参加された方のZEISSのAPO100で見たM42やトラペジュームは
コントラストが高く良く見えました。さすがにZEISSです。


今回の展示品で参加者の目を引いたのは
タカハシのTOA-130とビクセンのV-SDP125S(参考出品)です。

実際の星での比較はできませんでしたが
遠くの鉄塔などを見比べた限りでは甲乙つけがたい光学性能のようです。
この程度の比較テストでは光学性能の差異を見いだせなかったので
TOA-130のラック&ピニオンとV-SDP125Sのヘリコイドの比較談義となりました。


B13_10_062

 


V-SDP125Sのヘリコイドは直径が大きいので片手での操作はむずかしく
そのうえ,鏡筒にひねる方向の力がかかるので視野が揺れてしまいます。
ほとんどの方の感想はピントのピークを掴みにくいとのことです。


B13_10_063


V-SDP125Sのヘリコイドはピント位置を目盛りで読み取る事ができるので
それを必要とする観測には有利ですが
眼視観測ではTOA-130のラック&ピニオンが向いているようです。

ただ同じヘリコイドでも願視用のZEISSのAPO100は
小さくて極めて滑らかな回転なので気持ちの良いピント合わせができます。

どちらかと言えば撮影用のV-SDP125Sには遊びのない
大きなヘリコイドが必要なので操作性が犠牲になるのは仕方ないのでしょう。
撮影時はライブビューで星像を見ながらではなく
目盛り環を使ったピントの合わせに威力を発揮しそうです。


 

|

2013年10月 4日 (金)

84度の虹

B13_10_02

写真は数日前,屋上で撮影した虹です。(クリックで拡大します)

虹を見つけた時は完全な円弧状でしたが
カメラを取りに行ったりレンズをl交換しているうちに真ん中が消えてしまいました。

虹は雨粒内で折り返すように屈折した太陽の光が見える現象なので
太陽を背にした状態で見えます。その見え方は屈折率の関係上
見ているところから半径約42度の円弧を描くそうです。

慌てて持ち出したカメラについていた広角レンズは画角が狭くて円弧の全ては
入りきらず,超広角レンズに交換した時は既に一部が消えかけていました。

このような直径84度の円弧状の虹を写すには
長辺の画角が90度以上の超広角レンズでないとダメなのですね。
撮影は長辺の画角が100度のレンズを使っています。


話は変わりますが明日10月5日(土)から6日にかけて天文ハウスTOMITA主催で
「第二回九州大観望会2013(星宴)in星野村」が開催されます。
私もお邪魔しますがお天気が微妙です。
雨に絡む虹は見えなくていいので綺麗な星空が見えるといいですね。

|